1億円あれば「FIRE」できるそうですが、シンプルな暮らしならそれほど貯蓄がなくても働かずに暮らせるでしょうか?
※IMF「WORLD ECONOMIC OUTLOOK DATABASES(世界経済見通し)」より筆者作成 それでは、アメリカと同じように「S&P500」などアメリカの株式市場に投資を行えばよいのかというと、単純ではありません。 アメリカの株式市場へ投資を行う場合には、円をドルに換金し、日本で使うにはドルを円に換金しなくてはいけなくなります。換金の際に交換手数料がかかることや、為替相場の変動結果によっては、円に換金する際に運用益が減ることも考えられます。 それでは、為替相場の影響を受けない日本株市場で運用する場合は、どうなるのでしょうか。 日経平均プロフィルのヒストリカルデータによれば、1980年から2023年までの43年の日経平均株価は、年率で3.67%となっています。先ほどのインフレ率を引くと2.81%となり、月に30万円が生活費と必要であれば、30万円×12ヶ月÷2.81%=約1億2800万円の元本が必要になります。
質素な生活で「FIRE」は可能か?
続いては、住宅ローンがない場合や、賃貸住宅に住んでいない場合を仮定してみましょう。この仮定に基づき、毎月の生活費を20万円としたら、必要な元本はどう変わるでしょうか。 20万円×12ヶ月÷2.81%=約8541万円 比較的質素な生活をしたとしても、8000万円以上が必要になってしまいます。やはりある程度の資産が必要になってしまうので、貯蓄がないと難しい可能性があります。 ここまでの例では、日経平均株価の利回りと日本のインフレ率を基に計算しています。しかし、日経平均よりも利回りが上回っている投資信託は多いです。 仮に運用利回りが6%の投資信託があり、今後の日本のインフレ率が1.5%になったとすると、4.5%の差があります。この仮定の下で、月の生活費20万円を資産運用によって補う場合、元本としていくら必要か考えてみましょう。 20万円×12ヶ月÷4.5%=約5333万円 8000万円から比べると少なくはなりましたが、やはりこの場合でも5000万円と、高額な資金が必要になります。 さらに、運用時のリスクも加味する必要があります。これまでの仮定では、毎年安定した運用ができている場合を想定しています。しかし、運用益はプラスの年もあればマイナスの年もあり、資金の使い方も工夫する必要があります。