ラーメン業界にも働き方改革の波、のれん分けをせず新しい味が続々誕生
たしかに、漫才もフォーマットがありながら、千差万別に多様化してきた。いつからか『M-1グランプリ』が年末の風物詩として定着したように、日常に浸透することで、多様なチャレンジが生まれやすくなる。 「牛丼、カレー、ハンバーガー……国民的な人気を誇る食べ物があると思います。その代表的なお店を挙げてくださいと伝えると、だいたい皆さん、同じお店になると思います。おそらくチェーン店をイメージした方が多いのではないかと思います。
■大型チェーン店がなくても巨大市場を形成 では、ラーメン店はどうでしょう? 僕がこの質問をすると、多くの人がバラバラの答えになるんですね。個人店がこれだけ乱立していながら、巨大なマーケットになっているものはラーメンしかない。だからこそ、チャレンジャーが多いし、さまざまなブランディングがある」 ラーメン店には、店名の前に付く「ショルダーネーム」と呼ばれるものがある。「中華そば〇〇」「麺屋〇〇」「ジャパニーズヌードル〇〇」など、「ショルダーネーム」からお店の雰囲気を感じ取ることができるよう、各店舗、こだわりを持って名付ける。こうしたディテール一つをとっても、ラーメン文化が他の国民食と一線を画すことは明らかだ。
最後に、ラーメン通である赤池さんに、都合のいい質問をさせていただいた。 「比較的並ばなくても食べることができる、名ラーメンはないでしょうか?」 しばらく考え込むと、赤池さんは「基本は並ばないと食べられない」、そう笑って釘を刺しながら、こんな情報を教えてくれた。 「コロナ禍の影響で、夜に営業しないラーメン店が増えました。実は、まだ戻り切っていない状況で、かつては夜に営業していたお店が、今も昼のみというところが多いです。そんな中、早稲田にある『巌哲(がんてつ)』や中目黒にある『八堂八(やどや)』は夜も営業しています。これらのお店はラーメン界でも一線級の味と人気を誇り、実際、昼間は並んでいるのですが、夜に行くと並ばずに入店できることが少なくない。僕も夜に行くことのほうが多い(笑)」
こうした楽しみ方ができるのもラーメンならでは。ラーメンの多様化は、さらに拍車がかかりそうだ。
我妻 弘崇 :フリーライター