パワハラが発覚、“若手カリスマ医師”だった院長の今「同じ場所で地域医療をやり続けることが罪滅ぼし」 #ニュースその後
パワハラで多くのものを失った医師 停職中は自分自身と向き合う日々
停職1か月の懲戒処分を受けた江角さんは、午前中はジムで体を動かし、午後は読書などをしながら自分と向き合う時間を過ごしていました。 志摩市民病院 江角悠太医師: 「不適切な発言があったというのは、もちろん認めていますし、相手方の彼女に関しては大変申し訳ないことをしたと感じています。言い方、態度。そこは絶対に改めるべきと強く感じました」 当時は、1年で1億円の経営改善が求められるプレッシャーの中、予算の使い方について事務長と意見の対立があったといいます。院長としての仕事に加え、患者の診察も行い、さらには「絶対に断らない」を実現するため月の半分ほどの当直勤務。次第に追い込まれ、厳しい言葉になったと語りました。
パワハラの報道が出てから市民の対応は一変。笑顔で挨拶してくれていたコンビニ店員にもそっぽを向かれる日々を送り、「志摩市にいるのが辛い」と話します。 停職によって失ったものは他にもありました。江角さんの停職期間中、志摩市内で地域医療に関する学会が開かれました。全国から500人以上の医療関係者が参加したこの学会の学会長を江角さんが務めるはずでしたが、急きょ、江角さんの部下である副院長(当時)の日下伸明医師が代行することに。 実は、都会から離れた志摩で学会を開くことは、江角さんの“夢”だったのです。 過疎化と医師不足に瀕しているこの場所に、全国から医師の卵や若手を呼んで、地域医療のやりがいや楽しさを直接伝えるはずが、自らの言動によって、その機会を失ってしまいました。 1か月の停職期間が終わる頃、江角さんは復帰に向けて、病院職員に文章をしたためていました。内容は、職員に対して苦しい思いをさせたことへの謝罪。そして、病院を守り抜いてくれたことへの感謝が綴られていました。
失った信頼を取り戻すために始めた新たな取り組み
停職処分から1か月が経ち、復帰の日。向かったのは病院ではなく市役所でした。人事異動の辞令を受けるため、市長に呼び出されていたのです。その中身は、地域医療医務監という辞令。院長を解かれる人事です。懲戒処分後の1年間で400万円ほど収入も減るといいます。 この人事について志摩市の橋爪市長は「常にチームとして多くの職に支えられていることを、あなたは感じるべきだと」とし、病院の全職員に対し、ハラスメント研修を行うことも明らかにしました。 パワハラを受けた元事務長の女性も、復帰する江角さんに対し「院長1人が頑張ってるんじゃなくて、病院の職員の皆さんも一生懸命がんばっているのを認めてあげて」と求めています。