全国から集められた「桜」が2ヵ月間もの間ずっと見ごろ! 「桜を観る会」の舞台だった「新宿御苑」
全国から取り寄せられた約70品種、約900本…ここでしか見られない「桜」も
今年のソメイヨシノの開花は、全国で東京がいちばん早いと言われている。東京には桜の名所がいろいろあるが、新宿御苑もその一つだ。 【美しい!】なんと、ここでしか観れない「桜」も…! 安倍元首相が問題の「桜を見る会」を開いたことでも知られる新宿御苑。ここに植えられている桜は約70品種、約900本。なぜこんなにたくさんの桜があるのか。新宿御苑管理事務所の吉野幹浩氏によると、 「新宿御苑は、もともとは江戸時代に徳川家康の家臣だった内藤清成が賜った大名屋敷地だったと言われ、明治に入ってからは国営の農事試験場、宮内省の御料地を経て、1906(明治39)年に皇室庭園となりました。1917(大正6)年からは宮中の観桜会の会場となり、来客に多くの桜を鑑賞してほしいということで全国から桜を取り寄せたようです」 約70品種もの桜があるということで、2月中旬からカンザクラ、カワヅザクラなどが咲き始め、3月中旬からは枝垂桜(しだれざくら)、ヤマザクラ、ソメイヨシノなどが、4月上旬頃からはイチヨウ、ギョイコウ、ウコンなど八重咲や緑や黄色の花をつける珍しい桜が御苑を彩る。2ヵ月以上、桜が楽しめるのだ。 庭園二科長の石原志穂子さんによると、全国でも珍しい桜はいろいろあり、 「内藤清成が高遠藩の藩主であったことから、高遠町から寄贈していただいたタカトオウコヒガンザクラは、高遠町以外ではなかなか見られない品種ですし、サツマカンザクラは当園以外で見ることは難しいと思います」 ◆日当たりと風通し。これを大事にすれば100年以上の長生き桜に 芝生すれすれに枝を伸ばすソメイヨシノ。石原さんによると、「手元で花が鑑賞できるように、下の枝も切らないように管理しています」ということだが、散り始めに桜の花びらが舞う枝の下を通ると、桜に包まれたようになり、天国もかくやと思えるような美しさだ。 「桜切るバカ、梅切らぬバカ」と言われているが、やはり桜は枝を切ってはいけないのだろうか。 「そんなことはありません。とくにソメイヨシノは枝の更新がしやすく、病気になってしまった枝は他の枝や木に病気がうつらないように、早めに切って、新しい枝に更新するようにしています。ただ、切り口から病気が入らないよう、薬(癒合剤)を塗るなどして保護することが大切です」(石原さん) ソメイヨシノはテングス病という病気にかかりやすく、60年くらいで寿命を迎えてしまうとも聞くが、新宿御苑にはテングス病にかかった桜はほとんどないのだとか。樹齢100年以上の木も多くあるという。何か特別な管理をしているのだろうか。 「特別なことはしていません。肥料もそれほど与えていません。気をつけているのは、風通しと日当たり、土壌環境などの生育環境です。桜は陽樹で生育に多くの光を必要とするので、新たに植栽する際は太陽がしっかり当たるように樹間を大きくとることが、いちばん大事だと思っています」(石原さん) ソメイヨシノは枝が左右5m以上張るので、木と木の間は少なくとも10mほどあけるのが理想だとか。一時はできるだけ多くの木を植えようとして、樹間が狭まってしまったこともあるが、台風などで倒れてしまったり、朽ちてしまった木を植え替えるときには、樹間を大きくとるようにしているという。 ◆ソメイヨシノ満開の土日には8万人が来園したことも! ゆっくり鑑賞するならソメイヨシノ後 宮中の観桜会も開かれた新宿御苑。コロナも明けた今年、ぜひ楽しみたいが、 「ソメイヨシノの満開日の土日は8万人が訪れたこともあります。混雑の中ではゆっくり花が鑑賞できません。実は新宿御苑の桜のうち、ソメイヨシノは3分の1程度。ソメイヨシノが終わったあとは八重桜が咲き始めます。 また、桜というとピンク色を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、4月上旬には黄色い花びらのウコン、4月中旬には緑色の花が咲くギョイコウなど、珍しい色の遅咲きの桜も鑑賞できます」 (石原さん) 新宿御苑には新宿門、大木戸門、千駄ヶ谷門と入り口が3ヵ所あるが、新宿門より大木戸門から入ったほうが空いているとか。 平日に何度か訪れれば、さまざまな桜をゆっくり鑑賞することができるかもしれないけれど……。 ■3/23(土)、24(日)、30(土)、31(日)、4/6(土)、7(日)の10:00~16:00は、混雑緩和のため入園が事前予約制になります。 取材・文:中川いづみ
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