世界最高の右SBと呼ばれる日も近いか――。バルサで全試合フル出場を続けるクンデの進化が止まらない
ヤマルの活躍もクンデのサポートがあってこそ
ラ・リーガ8節終了時点で7勝1敗と好スタートを切り、首位に立っているバルセロナ。チャンピオンズリーグ(CL)ではリーグフェーズ1節こそモナコに1-2で敗れたものの、10月1日の2節ヤングボーイズ戦では5-0と完勝し、戦績を1勝1敗に持ち直している。 【動画】ストライカー顔負け! 難しい体勢から決めたクンデの今シーズン初ゴール そんなバルサで今シーズン、唯一開幕からの全試合フル出場を続けているのが、25歳のフランス代表DFジュル・クンデだ。右SBの絶対的なレギュラーながら、試合展開によってはCBに入ってプレーするなど、最終ラインの要として君臨している。 今シーズンから指揮を執るハンジ・フリック監督も「誰か彼に休むよう言ってくれ。試合が終わった後も、すぐにピッチでトレーニングしたがるんだ。こんな選手は初めてだよ。コンディション管理を徹底している」と、そのプロ意識の高さに舌を巻いている。 パフォーマンスも桁違いだ。昨シーズンまでは、試合中に集中力を欠く場面が少なくなく、軽い守備対応で失点に関与するケースも見られた。しかし今シーズンは、守備で致命的なミスを犯すシーンがほとんど見られず、ラ・リーガ2節のアスレティック・ビルバオ戦では、リーグ屈指のウイングであるスペイン代表FWのニコ・ウィリアムスと対峙し、ほぼ完璧に封じてみせた。 攻撃では、縦関係を築く右ウイングのラミネ・ヤマルと好連携を披露。ヤマルがライン際に張ってボールを受けたときは、インナーラップする動きを見せ、逆にヤマルが中に切れ込んだときは、大外のレーンを駆け上がってオーバーラップする動きを見せる。 クンデが効果的なサポートを見せることで、相手DFの意識が外に向けられ、ヤマルは比較的余裕を持った状態で仕掛けることができるのだ。ふたりのコンビネーションで崩すこともあれば、ヤマルがクンデをおとりに使ってチャンスを作り出すケースもあり、相手は的を絞れない。 ヤマルとの連携は日々向上中で、このまま練度を高めていけば、いずれリオネル・メッシとダニエウ・アウベスのような縦関係が見られるかもしれない。ヤマルが今シーズン、公式戦10試合で5ゴール・5アシストと圧倒的なパフォーマンスを発揮できているのも、背後でその17歳を支えるクンデのサポートがあってこそだ。 その献身的なプレーからも分かるとおり、精神面の成熟ぶりも見逃せない。バルサ加入当初は、得意とするCBでのプレーを望むあまり、右SBで起用されることに対して不満を露わにすることが少なくなかった。だが最近はそうしたコメントも聞かなくなり、与えられたポジションで自分の仕事を全うしている。 今年6~7月に開催されたEURO2024でも、フランス代表の不動の右SBとして全6試合にフル出場。堅守を誇った“レ・ブルー”の中でも際立った安定感を見せ、ベスト4進出に大きく貢献した。 近年のサッカー界でしばしば「世界最高の右SB」と評されるのは、トレント・アレクサンダー=アーノルド(リバプール/イングランド代表)、カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ/イングランド代表)といった選手たちだ。 さらには昨シーズン、レアル・マドリーでラ・リーガとCLの2冠、スペイン代表で欧州制覇に大きく貢献し、全盛期の輝きを取り戻したダニエル・カルバハル、パリ・サンジェルマンの重要戦力であるアシュラフ・ハキミ(モロッコ代表)も、その有力な候補だろう。 クンデの右SBとしての能力は、この世界屈指のタレントたちと比較してもまったく引けを取らない。それどころか、すでに上回っているという声もあるかもしれない。CBが本職であるということを考えれば、まさに驚異的だ。 今後、「世界最高」の地位を確立するうえで、試金石となりそうなカードが10月26日のラ・リーガ11節、マドリーとのエル・クラシコだ。クンデが対峙するのは言うまでもなく、ブラジル代表FWのヴィニシウス・ジュニオールだろう。 試合の2日後の10月28日に発表されるバロンドールの最有力候補とも言われるヴィニシウスを封じることができれば、評価が大きく上がることは間違いない。文字通り見逃せないマッチアップとなりそうだ。 文●尾池史也(ワールドサッカーダイジェスト編集部)