なぜ全国で「まちの本屋」は消えるのか? 生き残りかけ創業90年の老舗書店は考えた 「売る」から「過ごす」へ大変身
鹿児島県指宿市十町で90年以上の歴史がある米永書店(米永貞嗣代表)が今夏、移転に伴い新築オープンした。地域の特性や住民のニーズを踏まえた選書に力を入れ、店内には共用の仕事場「コワーキングスペース」やシェア型本棚を新設。全国各地で「まちの本屋」が苦境にあえぐ中、独自色や立ち寄りやすさを打ち出して生き残りを図る。 【写真】移転に伴い新装オープンした米永書店=指宿市十町
同書店は1920年代に創業。近くに学校があり、かつては教科書や教材、漫画などを多く取り扱っていた。だが少子化が進み、ネット販売や電子書籍も台頭。本の売り上げが落ち込む中、近年は官公庁や地元企業向けの事務用品販売に重点を置いてきた。 米永代表によると、旧店舗が道路拡幅工事の対象となり、徒歩で10分ほど離れた場所への移転を決めた。新店舗は約90坪の平屋建てで、高い天井で開放感を演出。高さ約5メートルの書棚やカウンターなどの内装は特注で「お客さんがゆったりと過ごせる空間づくりにこだわった」という。 選書にも工夫を凝らす。例えば店舗周辺には新築の家や子育て世帯が多いことから、住宅に関する本や児童書を充実させた。書棚ごとのテーマも周囲のニーズを分析し、介護やうつ病などと細かく設定。スタッフ手書きのポップで、お薦めのポイントも紹介する。 シェア型本棚は、本に限らず雑貨やハンドメイド作品も陳列可能。棚主になれば月1回、コワーキングスペースでワークショップなどを開催できる特典も設けた。今後は読書会などの催しも検討中で、米永代表は「誰もが気軽に立ち寄り、本に親しむきっかけとなる書店にしていきたい」と語る。
南日本新聞 | 鹿児島
【関連記事】
- 高校生は考えた、中心市街地で自習カフェはどうだろう 人気の図書館は席取りの列、飲み食いもできないし…11-29日に都城で社会実験
- 人口222人の限界集落に開業した酒屋が10年で売り上げ倍増…看板もなく、店頭まで来る客もまれなのに、全国にファン拡大
- 有人7島住んで良し、来て良し…移住相談から暮らしの手引き、観光情報まで、トカラ列島の魅力をWebで発信 十島村がPRサイト開設
- 過疎進む町に正面から向き合って、面白がったら答えが見えた 若者や移住者が新風吹き込むチャレンジ拠点 国登録有形文化財活用し「横川正丸屋」完成
- 仕事や緊急時でも地方都市には夜間託児がない…「子育て世代が頼れる居場所に」 元地域おこし協力隊のMOMOカフェ3周年 志布志市志布志町志布志