チームを活性化するインフルエンサー SAGA久光スプリングスの高卒ルーキー「ミイナ」の魅力【SVリーグ】
バレーボールSVリーグ女子のSAGA久光スプリングスに「陽キャ」の新人がいる。大阪・金蘭会高から今春入団した井上未唯奈(18)はアウトサイドヒッター(OH)とミドルブロッカー(MB)の両ポジションに取り組む「二刀流」プレーヤー。年代別日本代表でも活躍中の実力に加え、明るい性格でチームを活性化するインフルエンサーとしても赤丸急上昇中だ。 ■見るだけに元気になる井上未唯奈のはつらつフォト【写真】 高卒新人には思えない。人懐っこい性格で周囲の空気をやすやすと一変させてしまう井上は不思議な魅力の持ち主だ。「ピーピーキャーキャーすごいんですけど、そこが彼女のいいところなんです」。ポジティブなエネルギーはチームビルディングに不可欠だけに「話がかみ合わないこともありますが…」と苦笑しながらも、キャプテンの栄絵里香(33)は目を細めた。 名前の「未唯奈」は「ミイナ」と読む。「ピンクレディーのミイ(未唯mie)ちゃんみたいに愛らしくなってほしかったと聞きました」。昭和時代に空前のブームを巻き起こした伝説的なアイドルデュオの存在を、井上本人は知らない。それでも自らの名前の由来を楽しそうに明かすと、こう続けた。「未来へ向かって唯一の人に…という思いが込められているそうです」 まだ入団内定選手の立場だった3月のVカップでデビュー。7月には、年代別日本代表として中国・江門での「2024女子U20アジア選手権大会」に出場した。中国との決勝にセットカウント2―3で敗れながらも、ミドルブロッカーで奮闘。「試合会場が完全アウェーの雰囲気でした。DJも加わった中国のコールがものすごくて…。でも、そういう声が気にならないぐらい集中してプレーできました」。国際大会の独特な雰囲気も貴重な「経験値」として持ち帰った。 線が細く見えることから、高校時代までは「パワー不足」を指摘されることもあったという。「(それを補うために)スピードを意識したり、コースに打ち分けたりとか、自分でもそういうふうにしないといけないと自分で勝手に思い込んでいました」。思考に変化が生じたのはSAGA久光への入団後だった。 「もちろん、パワーは必要なんですが、決して力がないわけじゃなくて、きちんと伝え切れていないんだと」。181センチの身長以上に「高さ」を感じさせる手足の長さが井上にはある。「だったら、それを生かして『高いところ』から『しなやかに決める』イメージでボールに体重を乗せていこうと」。目指すスタイルの方向性が定まれば、あとはシンプルに突き進むだけだ。SAGA久光が8月中旬に中国のクラブチーム「江蘇中天鋼鉄女子排球倶楽部」と対戦した親善試合では、先輩の平山詩嫣(23)とともにミドルブロッカーでスタメンのコートに立ち、持ち味の移動攻撃とブロックで躍動。チームメートの得点や好プレーに対するオーバーリアクション気味のガッツポーズでも観客の目を楽しませた。 今夏は母校・金蘭会高が全国高校総体(インターハイ)を2年ぶりに制した。大分県中津市で行われた大会の初戦に井上も足を運び、スタンドから後輩たちに声援を送った。「いい意味で楽しそうに…コート内外の全員で勝ちにいこうとする姿が格好良かった。私も初心に戻れましたし、みんなに『ありがとう!』と言いたいです」。張り切る材料も増え、きらきらしたまなざしがさらにパワーアップした。「打点の高さはうちの中でもトップクラス。ライト側からの攻撃もいいものがありますし、これからが本当に楽しみな選手です」。酒井新悟監督(55)の評価もうなぎ上りだ。酷暑の夏が終わり、味覚の秋はもうすぐ。元気と夢が詰まった取れたての新米「ミイナ」が、その名を広める日もそう遠くはないだろう。(西口憲一) 【#OTTOバレー情報】