「日本サッカーのためにこの道を進もうという考え方をしているわけではない」引退した長谷部誠は日本代表監督を目指さないのか?
森保ジャパンに招集される選手の大半を、ヨーロッパ組が占めるようになって久しい。一方で指導者はどうなのか。ヨーロッパへ活躍の舞台を求めているのか。答えはノーなる。特にヨーロッパの5大リーグに所属するクラブで、監督を務めた日本人はいまだに一人もいない。長谷部が今後もドイツに拠点を置く理由がここにある。 もちろん監督への近道はない。まずはA級を取得するために約2年間の指導実績が求められ、さらにS級を取得するにはA級との合計で5年から6年はかかるという。17年目を迎えたドイツでの生活で堪能になっているドイツ語も、長谷部によれば指導者としては実戦レベルではないという。長谷部が続ける。 「自分のなかでは、最短どうこうというのはあまり意識していない。プロの現役選手と指導者はまったく違うものだと思っているし、長くプロサッカー選手だった人間が、いい指導者になるとも限らない。だからこそ自分はまず指導者のキャリアをしっかり積んで、多くのものを学んでいきたい。その意味でも休暇で、いままでの長いキャリアをいったんすべて落ち着かせて、体だけでなく頭も休ませてからまた新しいスタートを切りたい」 前述した母国の代表監督を務めた元キャプテンたちのキャリアを振り返れば、指導者経験がゼロのまま一度目の監督に就いたドゥンガ、そして長いブランクがあったマラドーナを除けば、クラブチームでしっかりと指揮を執っている。 そもそも、代表監督は望んでなれるものではない。指導者としての力を地道に蓄え、しっかりと実績を積んだ先で双方が進んでいく道が交わったときに、初めて可能性が生まれる。そのときに自信をもって快諾できるように。まずは愛してやまない家族と一緒に過ごす時間を増やしながら、長谷部はセカンドキャリアの青写真を書き記していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)