<リベンジの春・’23センバツ>クラーク 甲子園初勝利へ チーム紹介/上 名将、先を見据え指導 /北海道
「北海道地区は、クラーク記念国際高校を選出しました」。27日にあった第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の選考委員会を伝えるインターネット中継で校名が読み上げられたとき、校内の体育館で見守っていた選手たちは落ち着いた表情を保っていた。【金将来】 ◇生活と練習密に 「秋」を意識 1回戦で敗れた2022年春のセンバツは甲子園初勝利に手が届かなかった。今回は22年秋の全道大会を制し、文句なしで2年連続の出場を勝ち取った。「リベンジを果たす」という静かな闘志が体育館に漂う。新岡歩輝主将(2年)は表情を引き締め、「甲子園で思いっきりプレーして、必ず勝利したい」との決意を口にした。 クラーク記念国際は、三つの都道府県以上から生徒を集める「広域通信制」高校として1992年に創立。野球に特化したスポーツコースは2014年に開設された。そして、野球部の指導者として、駒大岩見沢(14年3月廃校)を春夏計12回の甲子園出場に導いた名将、佐々木啓司監督(66)を招いた。 チームは佐々木監督の指導の下、創部3年目の16年に早々と夏の甲子園初出場を果たす。20年夏の道独自大会も北北海道の頂点に駆け上がったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で夏の甲子園は中止となった。先輩たちの悔しさを晴らすかのように22年3月、クラークは春のセンバツに初出場。だが、甲子園初勝利は遠かった。 北海道は伝統のある強豪校が多い。そこで創部して間もないチームがなぜ、3度の甲子園出場を実現できたのか。試合、練習、選手の生活などを取材すると、先を見据えた「ササキイズム」が見えてくる。 クラークの選手たちは全員が寮で寝食を共にする。寮は廃校となった地元の中学校を改修。1階に室内練習場を設け、教室を3人部屋に改良した。生活と練習がすべて寮内で完結できる。佐々木監督の提案だ。「練習を組み込んだ寮生活で指導を徹底する。これが、チームの強さにつながる」と佐々木監督は強調する。選手たちは練習に打ちこめ、共同生活で培われる仲間意識がその後のプレーでの潤滑な意思疎通につながるという。 育成の方針も特徴的。夏の北北海道大会や甲子園でメンバー入りしない1年の選手たちに目を配り、鍛える。高校野球は夏の甲子園が「ゴール」。夏に向けてチームを仕上げ、大会後に新チームに移行する。だが、佐々木監督はその前から秋を意識。「1年は著しく成長し、主力になる可能性がある。ポテンシャルを引き出すことが指導者の仕事」と言う。センバツの重要な選考基準となる秋の全道大会にも強い「春の甲子園サイクル」だ。 「過去」も大切にする。練習メニューをまとめて日々、ファイルに保存。選手たちに伸び悩む点があれば振り返って比較し、不足点を補う練習をメニューに取り入れる。「長年、指導を続けていると、練習の一つ一つが形骸化してしまうことがある。そのようにならないように選手を毎日よく見ることが大事」と自身を戒めている。 ◇ ◇ 22年のセンバツは1回戦で惜敗したクラーク記念国際。2年連続の出場が決まり、「まずは1勝」、そして、「その先へ」。リベンジに燃えるチームを紹介する。