尾上右近ロングインタビュー! テーマは“親の愛”。8回目の自主公演に込めた思い
歌舞伎への愛は距離感も大切に
――まさに右近さんにとってもさまざまな“親の愛”、そして“受け継ぐこと”が詰まった二演目なんですね。1年前の取材でも右近さんは、自分は歌舞伎という大きな歴史の中にいる、引継ぎ、受け渡していくことが大切……というようなことを語っていました。改めて右近さんが今、歌舞伎に対して抱く思いを教えてください。 僕はもともと歌舞伎が大好きで、歌舞伎に振り向いてもらいたくて自主公演を始めました。なかなか振り向いてくれなくて、待っている時間はとてつもなく長いんです。「いつまで続くんだ、この群舞(のキャスティング)……」みたいな(笑)。いや、群舞も大事ですけどね。でも歌舞伎に振り向いてもらえるようになると、それまでは自分のために歌舞伎をやっていたけれど、歌舞伎のために自分があるようにならなければ、と自然と思うようになっていた。受け継ぐ義務も、義理も、使命もある。 でも今は、「歌舞伎しかない」と盲目的になってしまっては良くないなとも感じていて。歌舞伎が“行”のようになってしまうといけないと思うんです。万一明日から歌舞伎をやっちゃダメだと言われても、ほかのことでスタッフを養っていけるくらいのマインドを持たないと。だから今は距離感も必要だと思っています。愛着と執着は違うな、というのが今の僕が歌舞伎に対して思うところでしょうか。とはいえYouTubeとかを見ていても、気付けば「歌舞伎」って検索していたりするんですけどね(笑)。 ――ちなみに1年前は、歌舞伎への思いは「恋から愛に移行している段階」だと話していらっしゃいました。少し落ち着いた感じでしょうか? わぁ。そんなこと言ってたんだ! だから1年齢をとったってことですよ、僕も(笑)。情熱は時に、人も自分も傷つけますから……(笑)。大切に思うがゆえに、距離感も大事だということです! 取材・文:平野祥恵 撮影:興梠真帆 <公演情報> 尾上右近自主公演 第八回「研の會」 一、 『摂州合邦辻 合邦庵室の場』 二、 連獅子 出演:尾上右近、中村橋之助、中村鶴松、尾上菊三呂、市川青虎、尾上眞秀、市川猿弥ほか 【大阪公演】 2024年8月31日(土)・9月1日(日) 昼の部 11:00開演/夜の部 16:30開演 会場:国立文楽劇場 【東京公演】 2024年9月4日(水)・4日(木) 昼の部 11:00開演/夜の部 16:30開演 場所:浅草公会堂