<錦糸町パラダイス>ドラマPが明かす柄本時生&今井隆文との制作裏話「ケンカみたいなものは何度かありました」
賀来賢人、柄本時生、落合モトキ、岡田将生がメインキャストを務めるドラマ24「錦糸町パラダイス~渋谷から一本~」(毎週金曜深夜0:12-0:42ほか、テレ東系ほか/Leminoにて配信)が、ついに9月27日(金)放送で最終回を迎える。(※最終話は深夜0:27から放送) 【写真】セリフがほとんどない役でもしっかりと存在感を放つ岡田将生 同作は、柄本と今井隆文がドラマ初プロデュースを手掛け、東京・墨田区錦糸町を舞台に総勢50人以上の人生模様を描く人間ドラマ群像劇。掃除屋「整理整頓」の社長・大助を賀来、「整理整頓」の社員で大助の幼なじみ・裕ちゃんを柄本、「整理整頓」の社員で大助と裕ちゃんの後輩・一平を落合、一匹狼のルポライター・蒼を岡田が演じている。 このたび、WEBザテレビジョンでは同作のプロデューサー・太田勇氏にインタビューを実施。制作の経緯や、撮影の裏話などについて聞いた。 ■とにかくすごくやる気があるっていうのは伝わりました ――第1報のリリースで、「1年前に柄本さんと今井さんと渋谷で会ったときに、柄本さんからドラマの相談をされた」とコメントされていましたが、改めて今回のドラマを制作することになった経緯を教えていただけますか? 渋谷で二人に会ったとき、時生くんに「どんなドラマをやりたいの?」って聞いたら、「今はSNSのタイムラインに喜怒哀楽が同時に流れてくる時代。例えば、今この瞬間にプロポーズされてすごく幸せな人もいれば、ある人はどこかで職を失ったり、犯罪に巻き込まれていたりするかもしれない。じゃあ、プロポーズされた人が“最高です!”っていう写真をSNSに上げたりすると“不謹慎だ”みたいなことを言う人がいるけれど、それって本当に不謹慎なんだっけ?みたいな…。SNSで喜怒哀楽が同時に起こっているっていうのを群像劇で見せたいんです」という話を聞きました。 僕もちょうどその時期に似たように感じたことがあって、“誰かにとって正しい人は、誰かにとって悪に見える”みたいなことって普遍的なテーマでもあるなって。僕も面白いなと思ったので、会社に持ち帰って「こういう企画をやりたいんです」って提案したところが最初のきっかけですね。 ――柄本さんと今井さんは本作がドラマ初プロデュースとのことですが、プロデューサーとしてのお二人はいかがでしたか? とにかくすごくやる気があるっていうのは伝わりました。今井さんは、過去にも映像作品のプロデューサーとかはやっていたりして、裏方への理解があるので、僕と時生くんの間にうまく入ってくれて。 今井さんは俳優としての気持ちも、プロデューサーとしての気持ちも分かるのですが、時生くんはプロデューサー未経験なので、結構突拍子のないことを言ったりするんですね。例えば、台本の直しとかもすごく抽象的な感じで、「僕の中ではこのシーン、音楽のリズムが鳴ってないんですよね」とか言ったり(笑)。 “なんかよくわかんないな…”って思っていると、今井さんが「多分こういうことかな」って理解してくれていたりして。大変なこともありましたが、今井さんが間に入ってくれたおかげで、うまくいった部分も多かったかなと思います。 ――結構苦労した部分も多かったのでしょうか? そうですね。やっぱり予算の部分は大変でした。テレ東の深夜ドラマなので、できることに限りがあるのですが、時生くんは俳優なので、テレ東の深夜ドラマとフジテレビの月9の予算の違いとか知らないじゃないですか。それでやりたいことを言うので、「それは時生くん、無理だよ」って。そうすると「太田さん、やる気がないんですか?」みたいな(笑)。そんな感じのケンカみたいなものは何度かありましたね。ただ俳優がプロデューサーをやるスタンスとしては正しいと思います。 あとは脚本も、今回は時生くんが声を掛けた劇団年一のメンバーがメインなので、彼らが言いやすいセリフということにこだわっていて。でも時生くんは脚本家ではないし、先ほどお話したようなふんわりした直しが多かったりするので、そこの意思疎通が難しくて、脚本の話をしながらもめたこともありました。 ■岡田さんが蒼を演じると、セリフがなくてもちゃんと成立するということを実感しました ――4人は十年来の友人とのことですが、実際に現場で皆さんの演技をご覧になっていかがでしたか? 4人の仲がいいというのはもちろんありますが、4人とももう20年近く俳優をやっていて、売れている方たちなので、 “こんなふうに解釈して、こんなふうに面白くしてくれるんだ”みたいな驚きがそれぞれありましたね。 賀来さんはやっぱりコメディーがお上手な方だなと演技を見て思いましたし、岡田さんが演じる蒼っていう役は、ほとんどセリフがないんですけど、やっぱり岡田さんが蒼を演じると、セリフがなくてもちゃんと成立するということを実感しました。 あと落合さんは、ドラマの中では弟分みたいな役ですが、本当にそのままで、賀来さんと時生くんが出したものに対してやりやすいものを提供する、というような感じでしたね。それぞれの演技を楽しく見ていました。 ――岡田さんは、ドラマの中で他の3人との絡みがほとんどないと思いますが、現場も一緒になることはほとんどなかったのでしょうか? 現場では3回か4回くらい一緒のときがあって、4人で一緒にお昼ご飯を食べたりしていましたね。 ――撮影で印象的だったシーンや、苦労したシーンなどはありましたか? チーフ監督が廣木(隆一)さんといういろんな映画を撮られている方なのですが、ワンカット長回しで有名な監督さんで。廣木流みたいな、ワンカット長回しをいろんなところでトライしました。 僕が担当した第3話(7/26放送)で、心音(さとうほなみ)と心音の友達のミカ(矢野あゆみ)が自転車で走っていくシーンがあるのですが、あのシーンも2分半とか3分くらいワンカット長回しで撮ったんです。 廣木さんもいろんなシーンをワンカット長回しで撮っているのですが、結構大変なんですよ。ワンカットで撮るということは、演出的にも結構詰めないといけないし、当然役者さんはセリフを失敗したらいけないし。 実際に撮影するとなったら、錦糸町で撮影していたので、車を止めたりとか信号がいいところを狙ったりとかいろんな準備が必要だし。でも、3分間ずっと撮っているから、例えばその間にパトカーの音が聞こえたら、もうそれでやり直しなんですよね。 最終回の第12話で音楽フェスのシーンが出てくるのですが、そこでも廣木さんがワンカット超長回しで撮っているシーンがあるので、ぜひ注目していただけたらと思います。 ――長回しのシーンでは結構アドリブが入ったりもするのでしょうか? そうですね。長回しで撮っていると少しアクシデントが発生しても止められないので、何かアクシデントやハプニングが起こったら、それがまるで最初からあったかのように演じてもらったりしたこともありました。そういう部分も想像しながら見ていただけたら、また面白いかなと思います。 ■こだわりがたくさん詰まっていると思います ――主題歌の「燦美歌」(MOROHA)もドラマの雰囲気にぴったりで、オープニング映像も面白いなと思ったのですが、その辺りも結構こだわって作られたのでしょうか? そうですね。オープニングやアフロさんの歌詞などは何回か打ち合わせをさせていただきました。ドラマの主題歌って、あまり歌手の方と直接話さないこともあるんですよね。台本を歌手の方に送って、歌手の方が曲を作って、提出しておしまい、みたいなことが多いんです。でも今回は、台本を読んだうえでアフロさんと何回も会って、「台本の中でどれが大切だと思う?」みたいなことを時生くんとアフロさんで話をして、その後アフロさんが言葉を書いてきて…っていう感じで。 第1話から第12話までそれぞれ3~4行ずつアフロさんが思うことを書いて、それを並べて、そこから1曲のリリックを書く、みたいなことをしていました。何回もキャッチボールさせてもらいながら進めていったので、こだわりがたくさん詰まっていると思います。 ――オープニングでも錦糸町の実景が出てきており、ドラマもほとんど錦糸町で撮影されたとのことですが、錦糸町にこだわった理由や、錦糸町のイメージを教えていただけますか? まずは時生くんも「どこかの町を舞台にしたドラマを作りたい」と思っていたんです。それで、どこにしようかと話していたら、時生くんがふと「錦糸町とかどうですかね?」って言い出して。僕自身も今井さんも錦糸町はすごく引っかかったんです。 錦糸町って隣にスカイツリーがある押上があったり、相撲が有名な両国があったり、浅草があったりとか、周りはすごく観光地としてどんどん発展していっているのに、錦糸町は夜の町のイメージがあるので、あまり発展していなくてちょっとくすぶった感じがいいよね、というところで「錦糸町がいいんじゃない?」となりました。 ――実際に錦糸町で撮影してみて、町の雰囲気や住民の皆さんの反応などはいかがでしたか? 「ダービー通り」って呼ばれているディープな通りがあるんですけど、そこはJRAの馬券の大きな売り場があるから、中高年のおじさんが昼間から日本酒を片手に歩いていたりするんです。僕たちも撮影に行って、土曜とか日曜の朝8時ぐらいに現場に行くと、現場の飲み屋で騒いでいる人たちがいっぱいいる…みたいなことが結構あって。想像以上に酔っぱらいの多い町でしたね。 でも今回撮影で錦糸町に迷惑を掛けるので、早めに“「錦糸町パラダイス」っていうドラマをやります”っていうリリースを出したんです。それもあったおかげか、結構見た目が怖い人とか、酔っぱらっている人とかが「頑張れよ!」って声を掛けてくださったりして。わりと好意的に受け止めていただけていたので、あまり怖い目にはあわなかったですね(笑)。 ――では最後に、最終回の見どころや、注目してほしい部分を教えてください。 第12話では蒼の問題が解決するのが一番の見どころになります。蒼とまっさん(星田英利)との絆がどうなるのか、最後まで見届けてほしいですね。あとは、音楽フェスがいよいよ描かれて、第1話からずっと伏線を張っていた事件が解決するので、そこも注目して見ていただけたらと思います。