「空飛ぶ巨大な毒グモ」が米国を征服中? ジョロウグモの噂の真相は、主要メディアも報道
ジョロウグモは飛べるのか?
「記事を読むと、『オズの魔法使い』の空飛ぶサルのようなものを想像してしまいます」と話すのは、米クレムソン大学の助教授で侵略的外来種について詳しいデイビッド・コイル氏だ。 実際には、よくニュースで取り上げられる大きく成長したジョロウグモは飛べない。ただし、ジョロウグモだけでなく、多くの子グモは「バルーニング」と呼ばれる方法を使い、空を飛んで拡散する。 「ふ化直後の子グモは、ゴマ粒ほどの大きさです」とコイル氏は言う。「高い所に登り、下腹部を持ち上げて糸を出せば、風に乗ることができるのです」 「あまり言いたくはないのですが、春になると、無数の小さなクモがバルーニングで空を飛んでいます。誰もそのことに気づいていないだけです」 ショックリー氏は、ジョロウグモが新たな州に広がっていくことについて、「生息域は広がっていますが、外来種が10年かけて新しい州に広がるのは、珍しいことではありません」と言う。 さらに氏は、次のようにつけ加えている。「米国北東部の冬をどう乗り切るのかについては、何とも言えません。まだその地域に到達していないからです」
ジョロウグモは毒グモなのか?
これは少しばかり厄介な問いだ。その理由について、ショックリー氏は「クモは捕食者で、毒を使って獲物を捕まえるからです」と言う。 つまり、ほぼすべてのクモは毒をもつ。例外は、毒を作る能力を失った2つのグループのクモだけだ。 問題の本質は、ジョロウグモが人に害を与えるほどの毒を持っているかという点だろう。米国に生息するクモでそこまでの毒を持っているのは、クロゴケグモやドクイトグモといったごくわずかな種だけだ。ショックリー氏によれば、ジョロウグモの毒は人に害を与えるほどではない。 人がジョロウグモにかまれたという報告もわずかにあるが、蚊に刺されたときのかゆみ以上、ハチに刺されたときの痛み以下といった程度のようだ。
ジョロウグモは攻撃的なのか?
ジョロウグモはかなり大型で目立つ色をしているが、実際は臆病だ。 米ジョージア大学で研究を行っているアンディ・デービス氏は、「私の研究によると、かなりおとなしいクモです」と言う。「放っておけば、向こうから近づいてくることはありません」 デービス氏は、2023年5月15日付けで学術誌「Arthropoda」に発表した論文で、米国の在来種のクモに空気を吹きかけて驚かせると、96秒ほど動きを止めてから、また動き出すことを明らかにした。 ところがジョロウグモは、1時間以上経過しないと動き出さなかった。そのため、ジョロウグモは記録上、最も臆病なクモとなった。 「私は何度もジョロウグモを手にのせたことがあります」と言うコイル氏だが、かまれたことはない。「私の子どもたちも同じようにしています。ジョロウグモはとてもおとなしいのです。大きくて気味悪く見えるからといって、有害だとは限りません」