YOASOBIや山下達郎などのMVを手掛けたアーティストninaが初個展を開催 初挑戦で感じた手応え
nina:それはなかったですね。もともと個展の開催を決めた時から「身体性」をテーマにしたいと考えていました。日々デジタルなものやバーチャルなものに囲まれて生きている中で、人間としての軸を失いかけているような感覚があって。そこから、軸である「身体を忘れたくない」という思いが芽生えました。本来の自然を切り離したくない、という気持ちだと思います。
ただ、完全な生身としての身体であったり、ネイチャーとしての自然とはまた 違うと考えています。私自身、幼い頃からコンピューターやインターネットに 触れて育っているので、それも自分にとって自然なものであって、切り離せな いものです。そうした自分が抱えている矛盾や、自然との距離感を考えた時に 「AfterBirth」という言葉に出会いました。
「AfterBirth」はもともと医学用語で、日本語だと後産(あとざん)。出産直後に、子宮から排出される胎盤や胎膜の一部などを指す言葉なんです。生まれる前は自分の一部だったのに、生まれた瞬間から自分とは切り離されている、というのが私の考えるテーマにぴたりと当てはまったので、展示タイトルを「AfterBirth」にしました。
初挑戦の立体作品と油絵
WWD:今回、新たに立体作品や油絵に挑戦しましたが、その理由は?
nina:「身体性」をテーマにした個展の空間を作る上で、まずは実際に対面できるものがあった方がいいだろうと考えて、立体作品を作りました。この作品は東京で1人で部屋に閉じこもって、SNSだったり、いろんなデジタルの情報や視線に覆われて、本当は自由だし身軽でどこにでも行けるはずなのに、どこにも行けなくなってしまっている女の子をイメージして作りました。サイズも等身大で作っているので、私がイメージした女の子が実際に感じてもらえると思います。
実際の制作に関しては、私がデザインを考えて、それを京都の造形師さんにお願いし、立体造形していただきました。そこに私が目や口などの顔の描画と、一部ペイントをしています。