103万円の壁引き上げ…市町村に波打つ不安 一方で期待する首長も「働き手確保につながる」「経済浮揚し税収として戻る」
年収の「103万円の壁」引き上げを巡り、鹿児島県内の首長に懸念が広がっている。税収の大幅減が厳しい自治体財政を直撃しかねないが、政府による穴埋め策は見通せないためだ。働き手不足の解消や経済浮揚につながると期待する声もある。 レジ打ち15年、最近時給が上がった。うれしいけれど「最賃1500円」は手放しで喜べない…「年収の壁」がある限り
霧島市は、国民民主党の主張通り所得税の非課税枠を178万円に引き上げた場合、市民税だけで年21億円減ると試算する。「市の税収の1割を大きく超える金額。影響は大きい」と中重真一市長。壁引き上げは「働き手の確保につながるので検討すべきこと」と理解を示し、地方財政が打撃を受けない対応を求めた。 1人4万円の定額減税をはじめ、国の税制改正に伴う地方減収分は特例交付金で手当てするケースが多かった。日置市の永山由高市長は「今回の見直しは恒久減税。国も財政が厳しい中、巨額の減収を全て補てんする措置ができるのか」と不安視する。一方で「手取りが増え消費が活発になれば、経済が浮揚し税収として戻ってくる」とプラス面に期待。非課税枠引き上げが「長期的に財政にどう影響を与えるかという議論もしてほしい」と語る。 県町村会長の高岡秀規・徳之島町長は「税収が減ると住民サービスだけでなく、地方創生の事業に大きな影響が出る。穴埋めを国がどう対応するのか心配だ」と漏らす。「財源論にとどまらず、壁を見直せば経済・雇用対策としてどれだけ効果があるのか大局的な観点で議論を」と訴えた。
ある町長は、補てん策を示さないまま引き上げ方針だけを先行させた政府の姿勢を批判した。「地方財政に影響を及ぼさない対応策を考え、提案するのが責任ある姿ではないか。目先の選挙対策で振り回されるのはいつも自治体や国民だ」 ◇県と市町村合わせ415億円減収 鹿児島県の塩田康一知事は22日の定例会見で、年収が103万円を超えると所得税が発生する「年収の壁」を178万円に引き上げた場合、税収が県と市町村合わせて年間約415億円減るとの試算を明らかにした。県が約165億円、43市町村が約250億円。 国民民主党が自民と公明両党に求める非課税枠を178万円に引き上げた場合の個人住民税を試算した。地方交付税の減額分は含めていない。 塩田知事は「物価が高騰する中で手取りを上げるのは重要。一つの方策だ」と引き上げに理解を示しながらも「税収への影響に十分配慮しながら検討を進めていただきたい」と述べた。
南日本新聞 | 鹿児島