鍵はその土地ならではの文化…三大都市圏に偏る訪日客 地方は取り込めず、分かれた明暗
新型コロナウイルス禍を経て観光需要が急速に回復する一方、インバウンド(訪日外国人客)の滞在先は都市部に偏っているのが現状だ。政府が掲げるオーバーツーリズム(観光公害)の未然防止と観光需要の平準化までの道のりは遠い。 【グラフでみる】地方より東京、名古屋、大阪の三大都市圏に訪日客数は偏っている 観光庁の統計では、4月の東京、名古屋、大阪の三大都市圏の外国人延べ宿泊者数は計1035万人で、コロナ禍前の平成31年4月から40・6%増えた。対する地方は415万人(同5・9%増)にとどまり、明暗が分かれる結果となった。 政府が6月に策定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」では地方中心のインバウンド誘客に向けて観光資源を磨き上げるとしているが、現実はそう簡単ではない。 平成19年に世界文化遺産に登録された「石見(いわみ)銀山遺跡」(島根県大田市)では、20年にピークとなる年間約81万人が銀山周辺の大森地区を訪れた。狭い道に多くの人が押し寄せる観光公害も起きたが、ブームは沈静化し来訪者は令和5年に約25万人にまで減った。市の担当者は「石見銀山には来ても、市内で宿泊しない人は多い」と話す。 政府観光局の5年調査では、その土地を訪問したくなる理由として「温泉」「花見や紅葉、雪景色」「その土地ならではの文化」が浮上した。9年に銀山発見から500年の節目を迎える大田市は歴史的な街並みが残る地域の魅力発信や市内の観光スポットのPRなどを進めている。