大阪城天守閣「桃山の明暗」展 秀吉が着た?金色陣羽織も
NHK「真田丸」でも描かれた?陣羽織など展示
大阪城天守閣「桃山の明暗」展 秀吉が着た?金色陣羽織も 撮影:岡村雅之 編集:柳曽文隆 THEPAGE大阪
信長、秀吉、家康──個性の異なる名将たちに共通するのは、天下取りの栄華と、その栄華とは裏腹の人間としての悲愁ではないだろうか。大阪城天守閣で開催中の「桃山の明暗」展は、桃山文化の多面性や天下統一の時代の光と影を描く展覧会だ。勝者のまぶしさが切ないのは、なぜなのか。桃山文化の不思議を読み解く。開催は10月5日まで。 平野区の志紀長吉神社 大坂夏の陣・幸村奉納の軍旗公開された
戦場で金色に輝く秀吉の陣羽織
まずは派手な陣羽織からご覧いただこう。「蜻蛉燕文様陣羽織」だ。陣羽織は武将たちが戦場で着込んだ。戦場は命がけの晴れ舞台であるだけに、陣羽織は武将の理念などを色濃く映し出す。展覧会を企画した跡部信主任学芸員が次のように解説する。 「この羽織は秀吉が着用した陣羽織と伝えられている。全面を金にして、トンボとツパメの文様が描かれている。トンボは前へ前へと進んで飛んでいく。後ろへ下がらないところから、武将たちには勝ち虫と呼ばれて、とても好まれていた昆虫です。ツバメは武具に登場することの少ない鳥ですが、秀吉は武具に取り入れた。ツバメのすばやく優雅に飛ぶ様子を評価したのではないか」 金一色の空間に、縁起の良いトンボやツバメが躍動する。きらびやかな世界だが、背中のデザインは一層華やかさを増す。「日輪、太陽が大きく描かれ、その下をツバメが群れ飛ぶ」(跡部さん)まばゆいばかりの構図だ。 NHK大河ドラマ「真田丸」でも、強敵北条を倒す小田原攻めの際、秀吉がこの陣羽織を着込んでいるシーンがあった。
平和も繁栄もかりそめのあやうさ
続いては重要文化財「南蛮屏風」。6曲1双の大作で、ポルトガル船が日本の港に入港した場面では、上陸してきたカピタン(船長)一行を、屋根に十字架を配した南蛮寺の宣教師たちが出迎えている。 「赤い腹巻をした子どもが物陰から顔を出し、着飾ったカピタンらを不安と好奇心がいりまじった表情でのぞき見している。南蛮寺では入り口付近に丸いアーチが確認され、西洋の建築様式が取り入れられていたことを物語っています」(跡部さん) 海外文化との接触で風俗から建築様式まで、まちには刺激が満ちあふれ、子どもの心までを動かすような時代のダイナミズムが読み取れる。新しさを受け入れる桃山文化ならではのインパクトだろう。半面、この時代にはどこかあやうげな気配もつきまとう。 「桃山時代には長年続いた戦乱がおさまり、世は平和をおう歌する一方、多くの武士たちは引き続き対外戦争に動員され、農民たちは重い負担に苦しみました」(跡部さん) のちに訪れる徳川長期政権時代と比べると、安定には程遠く、平和も繁栄もかりそめにすぎない。