欧州議会選挙 フランスの右翼「国民連合」はなぜ第1党になったのか
EU統合がもたらした豊かさと暴走
EUでは、シェンゲン協定による国境の開放が1995年から始まった。統一通貨ユーロは1999年から会計通貨に、2002年からは同通貨の紙幣とコインも使用開始となり、各国は厳しい財政規律を求められた。 結果、移動は自由だし、どこでも働けるようになった。物価は安くなり消費生活も改善された。各国は愚かな支出ができなくなったが、政府に予算要求しても健全財政の壁を勝手に越えられなくなり、人々はブリュッセルの官僚たちに民主主義が乗っ取られたと感じた。 統合は人々を豊かにしたが、理想主義が暴走して、かえってコスト無視になったり、安全が損なわれたりすることも多かった。厳しすぎる環境規制はコスト上昇になる。食品安全規制のせいで伝統産品の製造が禁止され、移民や難民の増加は治安を脅かす。 加えて労働者保護や年金が手厚いフランスは、マクロン大統領がこれをドイツ並みにしようとして左右両方からの抵抗が起きた。農業大国だけに食品流通の自由化への抵抗も大きい。 ドイツはロシアの天然ガスをパイプラインで輸入し、エネルギー価格の上昇を招かずに環境対策を進めてきたが、ウクライナ紛争で輸入をストップさせられた。
極右のほうが首尾一貫
無秩序な移民・難民はヨーロッパのためにも出身国のためにもならない。ウクライナ紛争は国際法的にはロシアが悪いが、ロシアの庭先であるウクライナまでNATOやEUに入れたら安定した平和は実現しない。仏独両国は加入に否定的だったはずが、きちんといわないから戦争が起き、経済破綻を招いて極右を扶けた。 大衆の要求に応えるために右も左もよく似た要求をするが、左派は外国人対策や環境対策でのリベラルな路線を放棄できないから、極右のほうが首尾一貫している。 EU統合はいまさら後戻り出来ないし、英国のブレグジット(EU離脱)が経済にマイナスだったと見本を見せたので、極右も強く主張しなくなった。 フランスのRNはルペン父娘の交代のあと、「脱悪魔化」を進めた。娘が父を党から追い出して、その由来を別にすれば、なぜ極右なのかと言いうる党になった。逆にフランスの共和党やドイツのCDUは、左派との対抗上、左に寄りすぎ失敗した。 日本、英国、米国では国会に議席を持つ極右政党がない。仏独でいう極右は自民党・保守党・共和党のなかにいる。最近は、米国のトランプ大統領は極右的な政策をかなり実施したし、英国では国民投票でEUから脱退した。 仏独では、保守政党がもう少し極右政党の政策を取り込むとか、組織を切り崩して穏健派を迎え入れるべきだろう。20%や30%の国民を「極右思想の持ち主」と言って体制外に追いやるのは無理がある。