台湾映画『流麻溝十五号』が向き合う白色テロという負の歴史
「物語を語り継いでいく」
今年6月に僕が招待された台北映画祭のメイン会場は中山堂。日本統治期の1936年に台北公会堂として完成し、台湾総督府が置かれた時期もあったという。中庭には抗日戦争の勝利を記念する巨大な石碑が建てられている。建物は日本統治時代そのままだ。日本ならとっくに取り壊しているだろう。負の歴史を大切にする。そんな姿勢を感じる。 パンフレットに寄せた周美玲の一文を最後に引用する。 「不条理に対して私たちにできることは、忘れ去られないように物語を語り継いでいくことだけ。そうしないと、いつまた不条理の脅威が戻ってくるかわからないのです」 『流麻溝十五号』 監督/周美玲 出演/余佩真、連兪涵、徐麗雯 (日本公開中) <本誌2024年9月17/24日号掲載>
森達也(作家、映画監督)