おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第34巻編】~さらば、仮面の貴公子! 超人予言書の正体は『週刊少年ジャンプ』そのものだった⁉~
●超人予言書の正体は『ジャンプ』である そして、その純粋すぎる想いにロビンマスクも全力で応えます。まさに真剣勝負、ひたすら続く超絶難技の応酬合戦。こうなったロビンマスクはもう誰にも止められません。果ては己の存在そのものを示す予言書へとつながる糸すら、本気の技を出すためには厭(いと)わないと断ち切り、己の命より技の完遂を優先。まさに命を懸けた真剣勝負です。 その時、半身が消滅しながらもロビンが万人に向けて放った言葉「たとえ歴史から自分の名が消えようと、すべての人びとがこのロビンマスクのとった行動を心に刻みつけてくれればそれで本望」。この言葉を聞いて僕は、超人予言書という存在は何なのか、その正体にとうとう思い当たりました。これはあくまで僕の個人的憶測にすぎませんが...超人予言書とは、実はゆでたまご先生にとっての『週刊少年ジャンプ』そのものだったんじゃないでしょうか? 皆さんもご存じの通り『ジャンプ』には様々な作品が連載されては世を沸かし、しかしそれらもいつかは必ず消えゆきます。そして『キン肉マン』という大作品がまさに今、終焉に向かい最後の命の炎を燃やしています。今までは、たとえ好きなキャラが死んでも次の章がありましたが、王位争奪編を最後に『キン肉マン』の物語は完結するのです。しかし『キン肉マン』が『ジャンプ』から消滅しても、キミたちがこの作品で見たことを覚えていてくれたらそれでいい! 僕には、ロビンマスクのメッセージがいつからか、そう言っているように思えてならなくなりました。 そのロビンが両足のないまま繰り出した魂のタワーブリッジを代わりになって支えて完遂させたのが、人生最大のライバルふたり、キン肉マンとネプチューンマン。あまりにも綺麗、なんならこれで終わりでも十分よかった。しかしロビンの見せ場はここからまだ続くのです! 誰かに助けてもらったままでは終われない。最後は自らの手で決着をつける。なんと消滅の間際に"ロープワーク・タワーブリッジ"なる新技を編み出して、試合を決めて彼は消えていったのです...。 このロビンの姿勢こそ、まさにマンモスマンが求めた以上のものでした。ずっと人に抱けなかった敬意をマンモスマンは最後、ロビンに向けることができました。キン肉マンたちに形見を託して同じく消えていった彼はとても満足げでした。 今回は、あまりにも僕が好きすぎる巻のため、レビューがいつもより異常に長くなってしまったことをここまで読んでいいただいた皆さんにはお詫びいたします!! そして、そんな傑物ふたりの想いを受け取ったキン肉マン、そしてザ・サムライことネプチューンマンの新たな闘いが次巻、始まります。 ●『キン肉マン』4コマ ●こんな見どころにも注目! 本編でも少し触れました、試合中にロビンを危機から救った青い鳥ブルー・サンダー。ビッグ・タスクを機能不全とする、まさに試合の潮目を変える重要な役割を果たしてくれましたが...これほどの大仕事をやってのけたこの鳥の履歴、同じ話数内の10ページ前に初登場して、6ページ前に死んだばかり! 昨今、いかにじっくり伏線を固めていくかという作品の多い中、逆に読者についてこいと言わんばかりに...瞬間瞬間で様々な新しいドラマやイベントが起こり続けるこの疾走感! 『キン肉マン』の真骨頂ここにあり、です!! 漫画/おぎぬまX 構成/山下貴弘 ©ゆでたまご/集英社