【感染症ニュース】帯状疱疹43歳 皮膚の痛みでまったく寝られず・起きても激痛 医師「環境変化などのストレスに注意」
帯状疱疹は、水痘-帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。水痘とは、「水ぼうそう」のことで、感染したことがある人は、治癒した後も、体内の神経節にウイルスが潜伏した状態が続きます。潜伏したウイルスは、加齢やストレス、疲労等による免疫力の低下で再活発化し、帯状疱疹を引き起こします。また、帯状疱疹の合併症の一つとして帯状疱疹後神経痛があり、発症頻度は年齢や症例定義、報告によって異なりますが、帯状疱疹患者の10-50%で生じるとされています。国内外の疫学調査において、壮年層における帯状疱疹では発症から3ヶ月以上持続する疼痛が10-20%に認められます。帯状疱疹は、特に50歳を境に発症率が急上昇します。一方で、あらゆる世代でも発症する可能性があるため、注意が必要な感染症と言えるでしょう。今回、ご紹介するのは、北海道から「感染症・予防接種ナビ」に寄せられた、43歳の方の経験談です。 【2024年】12月に注意してほしい感染症!インフルエンザの動向に要注視マイコプラズマ肺炎は過去最多を更新医師「首都圏は伝染性紅斑に注意」 ◆帯状疱疹 43歳 北海道 転勤族で身寄りもなく、共働き。妻が病に倒れ家事などのことを担っていました。仕事も人事異動があり、環境変化が予想される時期。また季節の変わり目で寒くなっていた時期でした。 なんとなく腰、脇腹あたりが痛いなと。触ってヒリヒリするような感じでしたがどこか捻ったか、筋肉痛なのかな程度で、皮膚にも直接貼れる温め効果のあるものを貼り寝たところ、低音やけどになってしまったと。水ぶくれができてました。 それでも痛みは改善しないため、内臓系の疾患に怯えながらも湿布を貼ったり、やけどの塗り薬を使用。まったく改善せずむしろ痛みは増すばかり。 腰痛とか筋肉痛の痛みとは違うとは思いつつも、会社の同僚も心配してくれて、神経痛?とかやっぱり内臓系?とかアドバイスいただいたなかに帯状疱疹のキーワードがあったため、調べてみたらまさに症状がビンゴ。その日の夜、入浴のとき何気なく腰付近を触ったところ、発疹がありました。 まさに帯状疱疹と確信し、皮膚科を受診し、確定しました。 病名確定と適切な薬を出して貰える安心感でいっぱいでしたが、そこからが地獄。抗生剤、痛み止め、塗り薬を処方され、適切に使用しましたが、皮膚の痛みでまったく寝れず。起きても激痛。いつまで続くのか、何もする気が起きず生活していましたが、3日目の夜、痛みが嘘のように消えました。皮膚の発疹は水ぶくれでかわりませんが、薬のおかげか、健康が一番と今しみじみ噛み締めてます。あの激痛、ちょっと前まであったのに、今は全く感じなくなり、キツネにつままれたようです。とにかく受診が大事だと。薬ってすごいなといま有り難みを噛み締めています。明日も受診ですが、この2日間の激痛は耐え難く、この経験を皆さんに共有したいと思い投稿いたしました。皮膚の状態はまだ水ぶくれですが何より動けない、寝れない程の激痛が襲いますので、参考ください。 ◆感染症に詳しい医師は… 感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「直接診断した訳ではないので、発症してから、いつ診察を受けたのかなど、分からない部分も多いですが、典型的な帯状疱疹の症状だと考えられます。受診状況が不明な点もありますが、ピリピリした痛みが出たり、発疹が出た場合、すぐに医療機関を受診してください。放置すると症状が長引く可能性もあります。とは言え、的確に、皮膚科を受診されて治療を受けている点はよかったと思います。帯状疱疹は、50歳を超えると発症率が、一気に上がることが知られていますが、あらゆる世代で発症例がみられます。好発年齢やそれに近い方は、ワクチンがあることも知っておいていただければと思います。帯状疱疹で、気がかりなのは、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる、長期に渡る痛みなどが続くことです。今回の方は、奥様のご病気や人事異動による環境の変化で、ストレスがあったのだと考えられます。万が一、発症した場合は、無理をせず、安静にしてください。そして、奥様ともども、ご自愛頂ければと思います」としています。 ◆帯状疱疹の特徴 帯状疱疹は、かつて水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも発症の可能性があります。加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍、免疫抑制状態などをきっかけに、神経節に潜んでいた水痘帯状疱疹ウイルスが再び活性化することによって発症します。水ぼうそうにかかったことがある人なら約10〜30%、85歳以上の方は約50%が帯状疱疹を経験しているという報告もあります。症状としては体の片側に、時に痛みを伴う水疱状の発疹が発生します。通常発症する部位に、発疹が出現する2〜3日前からかゆみや痛みが発生します。その後、3〜5日間にわたって発疹が現れ、かさぶたになるまでには10〜15日ほどかかります。また、発疹が治っても帯状疱疹後神経痛といって、発症した部位の痛みが長く続くことがあります。 ◆帯状疱疹が増えている要因 また近年、帯状疱疹が増加しているという話をよく耳にします。それについて安井医師は「帯状疱疹が増えている原因の一つには、水ぼうそうの患者が激減したことがあると思います。現在、水ぼうそうのワクチンは定期接種となっており、子どもたちが水ぼうそうを発症することは大変少なくなりました。ただしそのことにより、かつて水ぼうそうにかかったことがある人たちも水痘帯状疱疹ウイルスに接することが少なくなりました。それまではウイルスに接することで免疫が維持されていたのですが、ウイルスに接する機会が少なくなったとで、免疫が弱まっている可能性もあるのではないかと考えています」としています。 ◆どの世代も注意 どの世代であっても、発症の可能性はあるので、年齢に関係なく注意が必要です。日本では、帯状疱疹を予防するワクチンが2種類あります。ワクチンには、発症したとしても重症になることを予防できる効果と、発症そのものを予防できる効果もあると考えられています。どちらも50歳以上の方が対象となります。2016年3月に阪大微研が製造する『乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」』について、「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」に対する「効果・効能」が追加承認されました。接種回数は1回です。また、2018年3月には、帯状疱疹の予防のみを目的としたワクチン(シングリックスⓇ筋注用)が薬事承認されました。接種回数は2回で、接種間隔は1回目から2か月以上あけて、6か月以内に2回目を接種します。帯状疱疹予防としてのワクチンは、任意接種のワクチンとなりますので、接種費用は基本的に自費となります。しかし、自治体によっては一部助成しているところもありますので、お住まいの自治体へお問い合わせください。 参照:帯状疱疹症例調査「宮崎スタディ」 引用:厚生労働省「帯状疱疹ワクチン ファクトシート 平成29(2017)年2月10日 国立感染症研究所」 取材:大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏