国民党も「中国の一部になりたい」とは思っていない 「習近平氏を信用すべき」台湾・馬英九前総統の発言に宮家邦彦が言及
馬英九氏の発言で台湾の人々は「やはり国民党はそういう党だ」と思ってしまう
飯田)馬英九氏からすると、「俺はシンガポールで習近平氏とも会って話したのだ」という思いがあったのでしょうか? 宮家)「だから何なのか」と思います。馬さんは「台湾統一を進めているとは考えていない」と言っていますが、共産党は台湾を統一すると言っていますよ。 飯田)新年の演説でも言及していました。 宮家)今回の発言で、少なくとも国民党候補である侯友宜さんの大逆転は難しくなったと思います。「やはり国民党はこういう連中だ」と言われてしまうのではないでしょうか。
中国共産党が統一する「一つ」と国民党が統一する「一つ」は、同じ「一つの中国」でも同床異夢
宮家)どちらにせよ、中国との関係は簡単ではないし、国民党も中国の一部になりたいなどとは思っていないわけです。「一つの中国」と言っているけれど、共産党が統一する「一つ」と、国民党が統一する「一つ」は、同じ「一つの中国」という言葉でも実態は正反対、同床異夢なわけです。その意味では、どちらが勝っても台湾にあまり大きな変化があるとは思っていません。中国は「いつか武力統一するのではないか」という議論がありますが、どうですかね。中国はロケット軍の汚職疑惑で大規模な粛清があったではないですか。 飯田)そうですよね。 宮家)燃料の代わりに水をミサイルに注入していたと言われていますが、それでは飛びませんよね。中国には「よい鉄は釘にならず、よい人は兵隊にならない」という言葉があるそうです。日清戦争の時代からずっとそうです。その意味では、軍にはやはり精鋭はいきません。または、あれだけ予算が大きいと、つい不正をやってしまうのかも知れません。 飯田)昔から文民というか、そういう国ですよね。科挙でもって、という。 宮家)軍人が信用できないから戦わずして勝つ。孫子の兵法ができたのは、軍人を信用していないからだと私は思っています。(汚職などで)大騒ぎしているようでは、少なくとも当面は「とても武力攻撃などできないのではないか」という見通しの方が強い気がします。 飯田)むしろ影響力工作の方が得意なはずなのに。 宮家)得意なはずですが、馬英九さんが失策してしまった。 飯田)転んでしまったということですね。