日本初の「城泊」に古民家活用…町おこしの新たな形に世界も注目! 仕掛け人のこだわりは…【バンキシャ!】
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愛媛・大洲市にある「大洲城」の天守閣に、1泊2食付きで1人66万円で宿泊することができます。この「城泊」の仕掛け人に「バンキシャ!」が取材。町の使われていない建物に目を付け、観光客を増やしたことで世界からも注目されています。密着取材をすると、観光客に楽しんでもらうためのある“こだわり”がありました。【バンキシャ!】 *** 古い町並みが残る、愛媛県大洲市。高台にある大洲城では、天守閣に宿泊できる「城泊」を4年前、日本で初めて導入した。客は甲冑(かっちゅう)姿でお殿様気分を味わうこともでき、1泊2食付きで1人66万円。これまでに44組、197人が宿泊した。 この「城泊」の仕掛け人の一人が井上陽祐さん(38)。市が進める町おこしのプロジェクトリーダーだ。 井上さんが城泊の次に目を付けたのが、古民家の再活用だ。この日はおよそ5年間、空き家となっていた呉服店へ。空き家を借りたい人と家主をマッチングするのが井上さんの仕事。レトロな雰囲気のレストランを開業したいとの依頼に井上さんは… 井上さん 「こっちはムチャクチャ古い。こういう所は見せると面白い。天井とか」 江戸時代に造られた天井。井上さんが大事にしているのは、古き良きものを残して活用することだ。 井上さん 「町づくりから観光までをつなぐためにも古いものを残していくのが大切。最終的に観光客も、そこを見て感動する」 7年前、30歳で東京の商社を退職し、ふるさとの大洲市に戻った井上さん。目の当たりにしたのは、変わり果てた町の姿だった。 井上さん 「高校の頃は町並みはきれいに残っていた。帰ってきたらどんどん壊れている」 およそ40年前は人口が5万7000人ほどとにぎわっていたが、今は、1万8000人ほど減少し、およそ3万9000人となってしまった。それに伴い多くの古民家が空き家のまま放置され、町は衰退の一途をたどっていた。 井上さん 「大洲市はそんなに知名度がない町。でも、僕の故郷なので大洲市を活性化させていきたい」 まずは町に点在する古民家を一軒一軒、ホテルに改修。価格は1泊2食付きで、1人4万2680円から。井上さんが最初に手掛けた古民家ホテルを案内してくれた。 井上さん 「江戸後期の物件で『村上邸』。 大洲のロウソク製造で大変栄えたお宅」 200年ほど前はロウソクを売っていたという。改装された室内には、歴史や文化を感じさせるモノがあった。 井上さん 「刀置きがある。今は木刀が置いてあるが木刀自体は明治期からある。こういうものはしっかり残す」 さらに、土壁を補強するために張ったとみられる壁紙も。江戸時代の帳簿だという。家主の「村上」の文字も残っている。 井上さん 「帳簿の紙が落ちないようにアクリルを張って(宿泊客が)見られるようにしている」 宿泊客に昔の日本の暮らしぶりを楽しんでもらおうと考えたのだ。 井上さん 「江戸時代の息遣いが分かる所は積極的に残して活用」 ただ、様々なケースがあったという。 井上さん 「『(空き家に)仏壇があるから貸せない』と」 そこで… 井上さん 「ホテルとして使っているが仏間だけは閉め切って、『お盆や正月には、お線香とお経をあげに入ってください』と。所有者に寄り添っていくことが必要」 こうした取り組みを地道に続け、井上さんは、およそ170の古民家のうち31棟をホテルや飲食店、土産物店に生まれ変わらせた。 訪れた観光客は… 「小京都らしくてキレイ」 「元々あるものに新しいエッセンスを入れて、大切に使い続けるのはすてき」 これまで、古民家ホテルには延べ2万人が宿泊している。 大洲市の取り組みは、世界で高い評価を受けた。国際認証機関が選ぶ「持続可能な観光地」の中で「文化・伝統保全」部門、世界1位となったのだ。 井上さん 「インバウンドの方が絶対的に増える。観光業界は活性化する余地がある。需要を獲得していけば町が活性化していく」 古い文化資産を再び活用する。その動きは他の自治体にも…。 広島県福山市で、今年7月から市のシンボル「福山城」で「城泊」がスタートしたのだ。 福山市経済環境局・池田圭次局長 「価値がある物を再認識して使えるものは使い倒す」 「高額な費用でも泊まる価値がある文化資産だと認識してもらう」 *9月15日放送「真相報道バンキシャ!」より