韓国を訪れる外国人の行列が後を絶たない…みんなが「このカード」を求める理由
【08月13日 KOREA WAVE】韓国の仁川空港をはじめ、ソウル駅、明洞駅、釜山駅などでは、韓国を訪れた外国人観光客がカードを購入するためにキオスクの前で長い列を作る光景が広がっている。 彼らが手に入れようとしているのは「NAMANEカード」だ。お金をチャージして使用するプリペイドカードであり、韓国に銀行口座を持たない外国人が交通カード機能からオフラインの簡便決済、オンラインの少額決済、無口座入金など、さまざまな金融サービスを利用できるようにするものだ。 特に、このカードの特徴として、自分の写真や好きな芸能人の写真を入れて印刷できる点が挙げられる。キオスク(無人注文機)で韓国の人気音楽グループ、BTS(防弾少年団)、SEVENTEEN、BLACKPINKのメンバーの写真をカードに入れて作成する海外のK-POPファンが多い。 NAMANEカードを運営する韓国「アイオロラ」の代表、チャン・ヨンス氏は「好きなアーティストの写真が入ったカードを使うことで、支払いの瞬間に楽しさを提供している。海外のファンたちは空港に到着すると、まずこのカードを購入する」と語った。 ◇外国人観光客の国内消費促進 2013年に設立されたアイオロラは、劇場や公演会場で写真付きチケットを発行する無人チケットキオスクから事業をスタートさせた。現在では、当時開発したチケット発行技術にフィンテックを組み合わせ、プリペイド電子支払手段を提供する電子金融事業者として事業を拡大している。 NAMANEカードは専用アプリに登録した後、カード・銀行振込・簡便決済などの手段で簡単にチャージでき、残高照会や送金も可能だ。提携しているレストラン、カフェ、美容施設、ショッピング、アクティビティ業者で使用すると、一定金額のキャッシュバックを受けられる特典も提供している。 NAMANEカードを利用すれば、外国人も自国通貨を使って両替せずにウォンをチャージして使用できる。外国人がウォンで決済できることは、決済時に発生する高額な海外手数料の負担を相対的に軽減し、韓国での消費をさらに促進する要因となる。 チャン代表は「カードの残高を正確に0ウォンまで使い切れないため、客は繰り返しチャージすることになる。これが客を維持する重要な要因であり、カードを発行しチャージさせた後、使用することで利益を生み出している」と述べた。 ◇通信無制限を含むナマネパスの発売 アイオロラは最近、韓国の大手通信企業「LG U+」や韓国鉄道公社(KORAIL)と協力し、外国人観光客向けの交通パス「NAMANEパス」を発売した。このパスは、NAMANEカードの機能を拡張したものであり、地下鉄とバスを無制限に利用できるだけでなく、空港鉄道の往復利用も可能だ。 また、通信サービスを組み合わせた商品であり、大衆交通機関とともにLG U+のモバイル通信を一定期間、無制限に利用できる。LG U+の空港カウンターで物理的なUSIMカードを受け取るか、eSIMをダウンロードすることができる。 アイオロラは、企業向けフィンテック事業にも力を入れている。韓流ファンダムを対象にした事業や海外送金サービス企業がウォン決済を簡単にできるように支援する「匿名プリペイド金融プラットフォーム」をAPIとして提供する方法だ。これは、一種の「ペイ」システムを構築する形といえる。 チャン代表は「国内に滞在する外国人労働者は金融サービスから疎外されがちだ。このような状況に対し、彼らを対象にした小額送金会社が増えている。給与を受け取る際にだけ送金アプリを利用するのではなく、クーパン(韓国の大手EC企業)などで商品決済をしながらアプリをより頻繁に利用するようにAPIを組み込むことができる」と説明した。 特に、企業はこれらの決済データをもとにさまざまな事業展開が可能であるとみる。チャン代表は「これまで、外国人がどこでお金を使っているのか知るのは難しかった。金融機関だけが持っていた顧客の決済データを、プリペイドサービスでも確保し、新しい事業への展開のきっかけとすることができる」「APIはウォン決済システムの構築に困難を抱える企業にとって大きな助けとなる。国境を越えて自由なウォン決済を提供し、決済手段自体を輸出する時代を築いている」と強調した。 ◇K-フィンテック技術のグローバル市場への展開 アイオロラは子供向けのフィンテックサービスも開発している。その一環として、昨年、無人文具店「ムングヤノルジャ」と提携し、子供向け特化プリペイドカード「プレイペイ」を発売した。このカードは「ムングヤノルジャ」の店舗はもちろん、大衆交通機関やカード加盟店でも利用できる。 チャン代表は「カードの購入から使用まで、子供たちが自ら経済活動を主導できるように作られていることが特徴である」と述べ、「大人による一方的な教育ではなく、子供たちが自ら消費しながら経済観念を身につけることができるようにした」との見解を示す。 アイオロラとムングヤノルジャは、エンターテインメント企業と協力して、さまざまなK-POPアーティストの知的財産権(IP)を活用したグッズを製作・販売している。プレイペイを使ってアルバムやグッズを購入すると、該当アーティストの特典が提供される。 同社が目指すのは、エンターテインメントとフィンテックを融合させた「エンターフィンテック」企業。韓国の大手芸能プロダクション「YGエンターテインメント」の音盤・音源流通子会社であるYGプラスが昨年、アイオロラのシリーズA投資に参加したのも、エンターテインメント分野での多様な相乗効果を期待したためとみられている。 アイオロラは今年後半にシリーズBの投資を誘致し、成長に向けたアクセルを踏む。投資資金を基にB2B事業をさらに加速させる。 チャン代表は「K-POPは世界的な潮流となったが、韓国のフィンテック技術はまだグローバル市場に進出していない。まずはK-POPファンがプリペイドカードに簡単にアクセスできるようにし、最終的には彼らが韓国内で金融サービスを適切に利用できるようにする。そんな企業を目指す」と意気込んでいる。 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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