女子１５００Ｍで力走する田中希実（右）＝撮影・吉澤敬太

　「陸上・セイコー・ゴールデングランプリ」（１９日、国立競技場） 　女子１５００メートルが行われ、東京五輪８位入賞で日本記録保持者の田中希実（ニューバランス）は４分７秒３９で４位だった。 　ラスト１周を先頭で迎えたが、最終コーナー付近で海外選手３人に追い抜かされ、４位。「追いつかれたところで思った以上に足は止まっていたのかなと思う。最後までそこまでうしろの気配を感じてはいなかったので、後ろがいるかどうかを確認したり、並ばれた時にそこからさらに絞り出す力がなかった」と肩を落とした。 　世界と戦う上で「自分の武器が確立できていない」ことに悩んでいる。この日も持ち味のラストスパートを生かせず「私の場合はラストにもつれ込んだらああなってしまう。そこまでで離しておかなければいけない力ですし、それができるようになってからラストにもつれたらどうしようというところ。今はそこのところが宙ぶらりん。最後もつれた時も勝ちたい気持ちが先走ってしまった。ロングスパートするにしてもそこがまだ押し切れなかった」と、順位以上の敗北感を味わっている。 　さらに「レース自体を楽しめなかった」と表情を曇らせた。「なんとなく注意力散漫というか。のめり込むと気が散漫になるのは紙一重。今は散漫していて余裕がないのめり込み方。何とか自分をだましだましいっていた」と集中もできていなかったという。 　日本中長距離界のエースとして世界の舞台で活躍してきた。何度も課題を乗り越えてきただけに、「今はすごく壁に当たってる。今までは本当に意味の壁には当たっていなかった。怒りをぶつけたりとかしたら打開できたけど、今は怒りをぶつけるだけじゃ打開できないところにきてしまっている」と実感を語りつつ、「人によっては『限界』と感じてしまうような、つかみどころのない壁に当たってしまっている」と告白。「（６月末の）日本選手権ではこのままいったら５０００メートル、１５００メートルに絞らないといけない。（８００メートルと合わせて）３種目で挑戦するかどうかも海外レースと合宿次第。まだ見えていない」と、浮かない表情だった。