「ネイルしていないと人権ない」インスタ映えの裏で“虚栄&陰湿行為“が渦巻くインフルエンサーの現実
バズるために初対面でも仲睦まじいツーショットを披露
遊ぶなら「写真も撮れるところ」で、映えない場所には行かない。シーズンごとに1人あたり7000~8000円くらいするアフタヌーンティーに行き、表参道のルーフトップのイタリアンでランチを食べ、銀座のカウンター寿司で一貫ずつ寿司の写真を撮ってはストーリーに載せる。 さらに言うと、フォロワーが多いインフルエンサー同士で遊ベば《〇〇ちゃんって××ちゃんと仲がいいんですね!》とファンが喜ぶので、初対面でも仲睦まじげにツーショットを撮る。 インフルエンサーは日常がどれだけSNSに利用できるか、どれだけ日常を無駄にしないかを考える。オシャレして出かけているのだから、オシャレな場所で写真を撮ってSNSに載せることができなければ意味がないのだ。 そのため、インフルエンサーと食事に行くと、口に入れるまでにかなりの時間を有する。ホテルでアフタヌーンティーをしようものなら、ロビーに入るまでの後ろ姿の動画撮影から始まる。Instagramのリール投稿用だ。 席に着いて、オシャレなティースタンドと紅茶が運ばれてきても、食べることは許されない。まずは食事だけの写真と動画、続いて自らが紅茶のカップやティースタンドに置いてあるマカロンを持ったり、いろいろなカットで写真と動画を撮影。 さらに店員さんに頼んでツーショットを収めてもらい、最後に自撮りでフィニッシュ。上手くいけばざっと30分くらいだろうか。「顔が盛れない」「この角度は微妙かも」「ケーキはこの位置じゃないほうがよくない?」となれば、どんどんその時間は延びる。もちろん紅茶は冷めるが、写真のほうが大事だ。 店員さんはどんな気持ちでこれを見守っているのだろうかと、よく不安になるが、インフルエンサーがSNSで宣伝しバズることでお店には人が押し寄せるため、意外にも対応は寛容だったりする。持ちつ持たれつの関係というわけだ。
それでもキラキラインフルエンサーをやめない理由
キラキラインフルエンサーの過半数は存在しない。彼女たちが載せる現実は、努力の上に作り上げた、理想の一瞬を切り取っただけにすぎないからだ。港区女子が港区に住んでいないように、インフルエンサーも都心になんて住んでいないし、実家が太いのもハイスペ彼氏がいるのもウソだったりする。 現に、都内在住の会社員としてタワマンの写真を上げていている友人は、職場も家も埼玉だし、実家が太いお嬢様設定の友人は、キャバクラのお客さんに買ってもらったものを投稿している。さらに、『ハイスペ男子から選ばれる女性になるには』と婚活女性向けにnoteでコンテンツを売っている女性の恋人は、既婚者だったりする。現実はまったく違うのだ。 ハイブランドのバッグを持ち、オシャレな場所で撮った奇跡の一枚を載せ、本当の日常をひた隠しにし、セルフプロデュースで作り上げた自分を発信する。インフルエンサーはその世界をさも現実かのように作り上げるプロである。 何ともくだらないと思われるかもしれないが、彼女たちがそうまでしてインフルエンサーという肩書きにこだわるには訳がある。それはインフルエンサーとして有名になればなるほど、自分たちが思い描き作り上げた理想が手に入れられるからだ。 私は数年前まで、紛れもなく一般人だった。だが、一夜にしてフォロワー数が1万人を超えたことをきっかけに、右肩上がりでフォロワーが増え続け、数万人になったころには“インフルエンサー”と呼ばれるようになった。 するとどうだろう。普段お金を出して買っていたスキンケアやコスメブランドから《ぜひうちの商品を使ってください》と、コスメやスキンケア商品が大量に届くようになった。ハイブランドのイベントに呼ばれ、芸能人と同じ場所のフォトスポットで撮影してもらえるようにもなった。 シャンプーやトリートメント、カラーコンタクト、服、スキンケア、コスメなど、さまざまな商品提供をしてもらえるだけでなく、SNSにPRを一度投稿するだけで、フォロワー数×1円計算で数万円の報酬まで支払われる。 そのおかげで、SNSでの収入はあっという間に本職の収入を超えてくる。さらに、SNSのフォロワー数が増えるほどに報酬の単価も上がり収入は青天井なのだから、やらない理由も続けない理由もない。 インフルエンサーは芸能人とは違う。容姿も現実の生活も、何もかも。でも、だからこそ大衆は一般人代表としての意を持つインフルエンサーに憧れる。芸能人と比べて“雲の上の存在”ではなく、 “自分もこうなれるかも”と希望を持たせてくれるからだ。 そして、インフルエンサー自身もそれを分かっている。だからこそ、その理想を崩さないように自らを取り繕う。それが、自分たちの作り上げた理想に近付くいちばんの近道だと知っているからだ。 文・写真:佐々木梨華
FRIDAYデジタル