「ネイルしていないと人権ない」インスタ映えの裏で“虚栄&陰湿行為“が渦巻くインフルエンサーの現実
「ネイルしていないと人権ない」 そうつぶやいたのは、インスタグラムを中心に活動し、10万人超えのフォロワーを持つインフルエンサーの友人だった。彼女が言う「人権」とは、社会通念上での意味を指すわけではなく、普段生活する“インフルエンサー”の世界での話だ。 【おへそが見えそう……】貴重なリンゴカラーのへそ出しルックで現れた王林 インフルエンサーと言っても、その世界は幅広い。YouTuberのジャンルでも、エンタメ・ゲーム実況や料理にビジネス……と、さまざまな種類があるように、SNSにおけるインフルエンサーの世界にもさまざまなジャンルがある。 中でも、いまから私が書くのはInstagramやX(旧 Twitter)を中心に、自撮りや普段の生活、コスメや美容、ファッションについて発信するインフルエンサーの世界である。 私は、日々のファッションやメイクなどを紹介するインフルエンサーとして活動している。冒頭でお伝えしたネイル以外にも、通常では考えられないようなインフルエンサー内の“さも常識”かのようなルールやマウント、一見してキラキラしたように見える世界の裏側。今回はそれらについて少し話したい。 ◆ネイルはインフルエンサーの初期装備 まず「ネイルしてないと人権ない」という友人の発言だが、正直分からなくもない。インフルエンサーが集まる場は多々あり、コスメやファッションブランドのイベント、レセプションパーティーなどが多い。それらに行くと、必ずと言っていいほど出席者はつま先から指先までキレイにオシャレをしていて、ネイルをしていない人間を探すほうが難しいほどだ。 そう、ネイルはインフルエンサーの、いわば当然の初期装備。「今日はいい天気ですね」とあいさつをするように、彼女たちの初手の会話は「ネイルかわいいね」だったりする。そして「そうなの~。今回はライブに行くから推しと同じカラーにした」「〇〇ちゃんのネイルもかわいいね。どこでやっているの?」などと、互いのこだわりのポイントについて会話を交わすのだ。 ネイルをしていなければ最初の会話となる引き出しがないのだから、インフルエンサー界隈で生きる友人が、ネイルを1ヵ月未満で変える理由にも納得だ。そうなると、伸びたジェルネイルで出かけるなんて言語道断である。 ちなみに、私はネイルをしていないので「何でネイルしないの?」と聞かれる。ジェルネイルは月に一度のリペアが必要となり、ネイルサロンで1回に5千円から1万円もかかるのがためらわれるから、というのがネイルをしない理由なのだ。しかし、インフルエンサーの彼女らにとってそれは必要経費であり削るべき出費ではないので、そんなことはわざわざ言わない。「ネイルしたいと思っているんだよね~。おすすめのサロンある?」と濁して終わるのが賢明だ。 ◆クローゼットの中に“服はあるのに着る服がない” ネイルの必要性なんて、まだ序の口でかわいいものである。インフルエンサーは、SNSに載せる写真のストックを考えて、服やバッグ、お店まで選ぶ。写真として切り取る世界に、労力とお金を全振りするのだ。 例えばバッグはもちろんブランド品。インフルエンサーの世界では、ブランドバッグを持たないことは“興味がないから持っていない”ではなく、“お金がないから持っていない”なんて風に見られる。さらに、ブランドバッグひとつを使い倒していても「他のバッグは持っていないの?」と言われるのだから、たまったもんじゃない。 インフルエンサー御用達ブランドといえば、最高峰がエルメスとシャネルなら、次がディオール、セリーヌ、ヴィトンだろう。“コーチやマイケルコースは大学生まで”という認識があるため、持っている人間はほぼいない。マルジェラ、ロエベ、プラダ、グッチなどはたまに見るくらいである。 自身が純粋な気持ちで欲しいと憧れていたはずが、“みんなが持っているから”とか“持っているとかっこいいから”という他者評価に、基準がどんどんすり替わっていく。 服は、ルミネやマルイに入っているブランドが多い。インフルエンサー御用達ブランドでいえば、SNIDEL(スナイデル)(※)がいちばんメジャーではないだろうか。1着1万円を超えるワンピースをシーズン毎に3~4着は買い、それをアフタヌーンティーやレセプションパーティーのときに着る。 ◆※淡いカラーの商品が多く、上品なテイストのアパレルブランド それ以外は格安通販サイトのSHEIN(シーイン)とGRL(グレイル)で大量に服を買い、「SHEIN購入品」「今回のGRLは当たりだった」とバズることを狙って着用し、SNSに投稿する。 ちなみに、これらの洋服は一度着るとSNSに登場することはあまりない。《またあの服着てる》なんて言われてしまうからだ。インフルエンサーたちの会話では「この前この服を着たから、もう着れない」なんて会話はざらである。そのため、クローゼットの中は“服はあるのに着る服がない”状態。そのせいか、インフルエンサーにはメルカリヘビーユーザーが多い。