29歳で夫が死亡。専業主婦でしたが「遺族年金」は5年しかもらえないのですか? 同じ死別でも、年齢で受給期間に「差」があるのはなぜなのでしょうか? 納得しにくいです…
生計を支えている人が亡くなったとき、遺族の生活を支えるための社会保障の一つに「遺族年金」があります。遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、それぞれ受給要件が異なります。 夫が亡くなった場合、配偶者を亡くしたという事実は同じであっても、妻の年齢や家族の状況によって受給できる遺族年金は変わってきます。本記事では、夫が亡くなった29歳の専業主婦の妻の事例をふまえながら、遺族年金について解説していきます。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
子のない専業主婦が受給できる遺族年金は遺族厚生年金
生計を支えていた人が何らかの事情で亡くなってしまうと、遺族は経済的に困ってしまうでしょう。そういった場合に、遺族の生活を支えるための社会保障が「遺族年金」で、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。 遺族基礎年金を受給できるのは「子のある配偶者」または「子」です。したがって、子のない配偶者は遺族基礎年金を受給できません。 一方、遺族厚生年金を受給できるのは、亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方です。 ・子のある配偶者 ・子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方) ・子のない配偶者 ・父母 ・孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方) ・祖父母 遺族基礎年金とは異なり、子のない配偶者も受給者に含まれますが、子のない30歳未満の妻が受給できる期間は5年間のみです。また、子のない夫は55歳以上でなければ受給できません。 つまり、遺族が子のない専業主婦の場合は、受給できる遺族年金は遺族厚生年金に限られます。また、年齢によっては受給期間が限定的なので、不公平さを感じる方もいるかもしれません。
今後は遺族年金のルールが変わる可能性がある
遺族厚生年金で、子のない30歳未満の妻が5年間の有期年金とされている理由は、将来就労できる可能性や再婚できる可能性が高いと考えられているためです。 現行制度では30歳未満の妻の場合は5年間の有期年金というルールが決まっている以上、ルールの範囲内で生活を立て直す工夫を行う必要があります。 しかし、すべての寡婦の方が遺族厚生年金を受給している期間中に就職または再婚できるとは限りません。有期の遺族厚生年金を受給する専業主婦の方は、将来への不安を感じることもあるでしょう。 現行の年金制度は、男女間や子の有無をめぐった不平等感がある点は否めません。また、専業主婦世帯よりも共働き世帯が多いという、昨今の社会の実態に合っていないという指摘もされています。 そこで、厚生労働省は現行の年金制度の設計が妥当かどうか、2025年の年金制度改正に向けて社会保障審議会で議論を始めています。 実際に、これまでも年金制度は時代の変化に合わせて改正されています。例えば、年金を受給するために必要な加入期間が25年から10年に緩和され、遺族基礎年金は子がいれば男女問わず受け取れるようになりました。 今後、遺族厚生年金の制度設計が見直される可能性は十分に考えられます。現在遺族年金を受給している人にも影響する可能性があることから、今後の年金に関するニュースは注目しておくとよいでしょう。
まとめ
子のない30歳未満の妻の場合、遺族基礎年金は受け取れず、遺族厚生年金のみ5年間受け取ることができます。5年間のうちに、生活を立て直すための工夫を行う必要があります。 なお、現行の年金制度には男女の不平等感や時代に合っていないという指摘がされているのも事実です。遺族年金を含めて、今後見直される可能性が考えられる点は押さえておきましょう。 出典 日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額) 日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額) 執筆者:FINANCIAL FIELD編集部 ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルフィールド編集部