なぜ「レコ大」では”1年を代表する曲”が大賞に選ばれないのか…いまも注目度が高い「紅白」との決定的な違い
出演交渉もはかなく…紅白を選んだ「YOASOBI」
何より痛かったのは、誰もが大賞にふさわしいと納得するだろうYOASOBIの『アイドル』をうまく取り込めなかったことだ。どうやら大賞候補となる優秀作品賞での出演交渉が実らなかったようで、ユニットとして特別国際音楽賞、また、Ayaseに作曲賞が贈られただけだった。 昨年の12月30日、YOASOBIのふたりは「レコ大」にVTRで登場した。 「素敵な賞をいただけて、本当に光栄です」(ikura) といった感謝の言葉を述べ、生演奏のかわりに香港のフェスで披露した際の映像が流されたが、インパクト不足は否めない。一説には「紅白」にだけ生出演して、希少価値を高めたいというYOASOBI側の思惑が働いたともされる。 実際、翌日の「紅白」で二人の出演は目玉となり、歌手別視聴率でも3位に入った。「レコ大」にとっては『世界に一つだけの花』の悲劇再び、である。 そして今年はというと――。『アイドル』のように目玉となりそうなヒット曲すらなく、劇的な盛り上がりは正直期待できない。昨年は11月22日に各賞が発表されたので、今年もそろそろだろうが、そもそも昔は、この各賞発表も生放送され、高視聴率を記録していた。 「怪物番組」ではなくなった今、その名残を感じさせるのが、過去の受賞シーン映像だ。番組の尺自体は全盛期の二倍くらいあるので、そういうものがつなぎとしてふんだんに盛り込まれる。ただ、おいしい映像は何度もこすられているので、飽きている人も多いのではないだろうか。 思えば、昨年のレコ大受賞曲はMrs.GREEN APPLEの『ケセラセラ』だった。曲中では「なるようになるのさ」と歌われる。「レコ大」もますます前途多難だろうが、そんな精神でやっていくしかなさそうだ。 ………… 【もっと読む】「つまらない」「退屈」との酷評も吹き荒れるが…“殺伐とせず、押しつけがましくない”橋本環奈の朝ドラ『おむすび』の真骨頂
宝泉 薫(作家・芸能評論家)