なぜ「レコ大」では”1年を代表する曲”が大賞に選ばれないのか…いまも注目度が高い「紅白」との決定的な違い
凋落の決定打となった「SMAPの国民的ヒット曲」
特に決定的な分岐点となったのが、2003年。この年はSMAPの『世界に一つだけの花』が大ヒットして、最終的にはトリプルミリオン(売上300万枚)に到達するスタンダードナンバーとなった。 しかし、所属するジャニーズ事務所(当時)は「レコ大」が二部門制を導入していた時期に賞レースから撤退。このときも賞を辞退することとなる。そのかわり、浜崎あゆみが『No way to say』で史上初のレコ大3連覇を果たしたが、それほど盛り上がらなかった。 象徴的なのは、辞退理由のなかにあった「ナンバーワンを目指すよりはオンリーワンを大切にしたい」という言葉だ。『世界に一つだけの花』のメッセージを地で行く理由だったわけだが、この曲が大ヒットしたこと自体「レコ大」の存在価値を揺るがすものだったといえる。 思えばTBSは、1978年に『ザ・ベストテン』をスタートさせ、ランキング番組のブームを作った。が、それも1989年に終了。賞や順位にこだわるエンタメは時代遅れになろうとしていた。 さらに、皮肉なことに『世界に一つだけの花』はこの年の「紅白」の目玉になった。SMAPはグループとして史上初のトリ、それも大トリを務め、歌手別視聴率でも最高の57.1%を記録。「オンリーワンを大切に」としつつ「ナンバーワン」であることを証明したわけだ。
もう「レコ大」では大晦日を戦えない
ただ、この年にはTBSも反撃をしている。「レコ大」のあと『K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!』を放送。その目玉だったボブ・サップと曙の対戦で、4分間の「紅白」超えを果たした。「紅白」もこの時間帯は格闘系(?)の大物・長渕剛で臨んだが、史上初めて裏番組に視聴率で抜かれたのである。TBSにとっては、江戸の敵(かたき)を長崎で討ったというところだろうか。 また、この成功が2年後に「レコ大」を12月30日に移動させることにもつながったのだろう。格闘技のほうがウケる、もう「レコ大」では大晦日を戦えない、というわけだ。ちなみに、この移動により「レコ大」の視聴率は前年の10.0%から17.0%に回復した。 とはいえ、ヒット曲不足などの根本的苦戦要因は解消されていない。2023年ではついにひとケタ台(9.6%)にまで落ち込むことになった。