コラムニスト・辛酸なめ子さんが振り返る「小池劇場」 尋常ならざる運の強さは「ピラミッドパワー」のおかげ?
東京都の小池百合子知事(71)が12日、都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)への出馬を表明した。注目はもっぱら元立憲民主党参院議員の蓮舫氏との闘いに集まるが、都民はこれまでの小池氏の姿をどう見ているのか。「小池劇場」をウォッチしてきた人気コラムニスト・辛酸なめ子さん(49)は、“推し活”スタイルの選挙活動や“ピラミッドパワー”など、さまざまな切り口から小池氏の強さを分析する。 【写真】「次の首相になってほしい女性政治家」トップはこの人 * * * 小池さんの印象は、まず、浮ついた感じのなさです。少し前、不倫相手とラブホテルで過ごしてから国会へ直行した自民党の女性議員のスクープが報じられていましたが、小池さんは異性関係のほか、政治資金流用問題などの大きなスキャンダルがほとんど出てこないですよね。だからこそ学歴詐称疑惑がやたらと騒がれているのかなと。 これで、実は若い男性をはべらせていたみたいな裏の顔があったらイメージダウンするけど、徹底的に私生活が見えない。見せないようにしているのか、もはや何もないのかは分かりませんが、「私のすべては都政にささげています」みたいな印象が、ある種の信頼感につながっている気がします。 外見も、昔のキャスター時代のファッションをそのまま貫いた“できる女”スタイルですよね。世間ではここ何年もロングスカートがはやっている中、今もミニスカートをはき続けるのは自信の表れかもしれません。 ブレーンがついているのかもしれませんが、とにかく自分自身の演出がうまい。これまでの都知事選ではテーマカラーの“百合子グリーン”を打ち出して、支援者たちにも緑のものを身につけるよう呼びかけていましたが、“推し活”と同じ手法だなと思って見ていました。
■いつも目が据わっている 2期目の選挙の前にはコロナ禍が始まって、飲食店での感染対策の指示や、企業への給付金支給などの対応で一気に評価を上げましたね。小池さん本人も、非常時でもまったく動じない落ち着きが漂っていました。いつも目が据わっているというか、一定の口調で滔々(とうとう)と話していて、妙な説得力がある。毎日のようにテレビで小池さんの会見が流れていたので、リーダーとしての姿が都民に刷り込まれていったように感じます。 今回の都知事選には、ライバル候補として、蓮舫さんが出馬しますが、怒りをふくめ感情表現が豊かな蓮舫さんと、何を考えているのか分からない怖さと貫禄のある小池さんという、対照的な印象です。蓮舫さんの勢いややる気は感じるけど、まだ小池さんの否定しか打ち出しておらずビジョンが見えないので、今のところ小池さんのほうが少しポジティブな印象です。 最近の都政は、都庁舎のプロジェクションマッピングだったりマッチングアプリ開発だったり、迷走気味の施策を次々打ち出していますよね。今まではコロナ禍や東京五輪など、大きな問題への対策に追われていたけど、ようやく小池さんも少し余裕が出てきて、こういう遊び心のある事業にチャレンジしはじめたのかなと。 小池さんは運が強い方なので、小池都政はまだしばらく続きそうな気がしますね。と言うのも、私の周りの精神世界に詳しい方が、小池さんのことを「元祖ピラミッドパワー」って言っていて納得しました。エジプト留学時代、ピラミッドの頂上で着物を着てお茶をたてたそうで、小池さんが授かったピラミッドパワーの余韻はまだ残っているような気がします。 (聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵) 〇辛酸なめ子(しんさん・なめこ)/漫画家、コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。『新・人間関係のルール』『女子校礼讃』『電車のおじさん』『煩悩ディスタンス』など著書多数
大谷百合絵