国土交通省が仕掛ける“ニッポンクルーズ列島化“計画
アメリカの2大クルーズ会社も
では、国交省が進める国際クルーズ拠点整備事業でどのようなクルーズ会社が今後、日本の港を母港にクルーズを展開していくことになるのか? 清水港の場合、すでに紹介したゲンティン香港グループが取り組みを進めているが、他の港は別表に示した通りで、クルーズ会社としてはゲンティン香港のほか、カーニバル・コーポレーション、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、郵船クルーズといった企業だ。 旅行会社、ジェイティービーでクルーズを専門に扱っているJTBクルーズ銀座本店によると、カーニバル・コーポレーションはアメリカ最大のクルーズ会社。著名な豪華客船「クイーン・エリザべス」を所有するイギリスの老舗客船会社、キュナード・ラインなどをラインナップとしており、同船は世界1周クルーズでたびたび日本にも寄港している。 また、ロサンゼルスに本社を置くプリンセス・クルーズもカーニバル・コーポレーションのラインナップで、全世界をクルーズエリアとし、2013年からは日本市場に参入。日本で建造されたダイヤモンド・プリンセスに約100人の日本語スタッフを乗船させ、日本式大浴場や寿司レストランなど日本人向けにカスタマイズされたサービスや施設を備えたクルーズを提供している。 ロイヤル・カリビアン・クルーズはマイアミに本社を置き、カーニバル・コーポレーションとともにアメリカの2大クルーズ会社として君臨している。ラインナップの1つ、ロイヤル・カリビアン・インターナショナルは世界最大の客船を有し、船上サーフィンやロッククライミング、ミュージカルやアイススケートショーなど斬新なアイデアで驚くべき施設を提供して乗船客を楽しませているという。
年間20万人台で推移してきた日本のクルーズ人口
すでに紹介したゲンティン香港は、スタークルーズをはじめ3つのクルーズブランドを有するゲンティンクルーズラインを運営しており、中国の広州、上海、深セン、台湾の基隆、高雄のほか、香港やマレーシア、シンガポール、フィリピン・マニラなどに母港があり幅広いクルーズ旅行を提供しているアジア最大のクルーズ会社。また、郵船クルーズは、日本郵船が国内での本格的なクルーズ事業を始めるにあたり、「飛鳥」就航に合わせて1991年に設立したクルーズ会社。横浜を母港に日本のクルーズ市場を拡大している。 アジア、そして世界を代表するクルーズ会社が日本の港に投資をする一方、これら港を母港としてクルーズを展開していくことになるわけで、国交省の取り組みは世界的なクルーズの波を日本列島に呼び込む”クルーズ列島化”計画にほかならない。国交省クルーズ振興室では、条件が整った港湾については今後もクルーズ船の受け入れ指定港として指定をすることはあり得るとしていることから、指定港湾がさらに増えていく可能性もある。 世界的なクルーズ会社が日本の港湾を母港とすることで、どのようなクルーズビジネスが展開されていくのだろうか? JTBクルーズ銀座本店では、「2016年の日本のクルーズ人口は緩やかな伸びながら過去最多の24.8万人になりました。日本のクルーズ人口はずっと年間20万人台で推移してきましたが、今後、増加していくものと予想しており、当社としてもシニアや富裕層にとどまらず若年層やファミリーなど潜在的なニーズを発掘していきたい」としている。