40代の管理職でも診断される「大人の発達障害」。専門家に聞いた特性と診断基準
近年、発達障害に関する書籍や記事が多く出ており、自らを発達障害だと公表する人も増えている。実は筆者(姫野 桂)もそんな発達障害者のうちのひとりだ。
今回は、昭和大学発達障害医療研究所の所長で准教授の太田晴久先生に、発達障害とはどのような障害なのかを聞いた。
大人になって発達障害を診断される理由と社会の現状
――発達障害には、さまざまな種類がありますが、具体的にどのような障害なのでしょうか? 太田 発達障害は生まれながらの脳の機能障害です。大きく括ると3種類あり、ひとつはASD(自閉スペクトラム症)。これはコミュニケーションが苦手だとか、こだわりが強いという特性があります。 ふたつ目はADHD(注意欠如・多動性障害)で、不注意が多いとか多動性・衝動性があります。あとはSLD(学習障害)ですね。これは読み書きや簡単な計算といった学習に困難が生じて、極端にうまくいかないものです。
――今まで100人近くの発達障害者を取材してきて、発達障害を疑ってクリニックに行っても発達障害の診断が降りず、この烏山病院でようやく発達障害の診断が降りたという方もいました。発達障害を診ているクリニックが少ないということですか? 太田 うちの病院では、2008年から発達障害外来を始めました。当時、発達障害は子供の障害であって、“大人に診断をする”という概念自体がそもそもありませんでした。 また、精神科医は発達障害を診るような訓練をしてきたわけではなく、専門的に発達障害の患者さんを診る先生が増えてきたのは、この十数年です。 現状でいうと、やはりまだ十数年しか経っていないので「うちでは発達障害を診ていません」というクリニックや病院もあります。昔に比べてだいぶマシにはなってきていますが、地方ではまだまだ十分ではないと感じています。
――発達障害はもともと子供の障害と言われていたが、成人してから診断されることもある、ということですね。 太田 そうですね。先ほど、幼い頃からある脳の機能障害であるということを述べました。つまり、発達障害は子供の頃からすでに特性が存在しているということです。 それが大人になるまで診断を受けてこなかった。子供の頃から「変わっているね」と言われていたけれども診断はされておらず、大人になって医療機関を受診して初めて診断が降りたというケースは多いです。 ――見落とされる理由や診断基準にはどんなことがありますか? 太田 ASDの方はコミュニケーションが不得手であっても、学業に問題がない場合、見過ごされることがあります。また、例えば、ADHDの忘れ物や落とし物が多いという特性は、単なる“不注意”として、診断を受けていないことがあります。 子供の頃は、「お母さん、子供をしっかり見てください」という教育の問題になったり、「もっと頑張りなさい」といった本人の努力の問題になったりする。でも大人になると、「自分では一生懸命に頑張っているのに、どうしても不注意が起きてしまう」ということがあります。 特性によって異なりますが、診断基準としては、社会生活や日常生活に困るほどの特性が出ているかということになります。