松本人志不在の番組を救った超ヒット企画…SNSで「水ダウ」が大拡散されたワケ
津田の芸人としてのセンスの良さで視聴者をドラマに引き込む
嫌々ながらミステリードラマを主人公としてすすめる津田だが、さすがは一流のツッコミだけありワードセンスの高さは秀逸だ。 第1弾では山奥のペンションが舞台だったが、大雨で橋が落ちて密室になった展開にも、そんなに雨が降っていないとツッコみ、「ブンブンブンブン車通ってるよ」と指摘。ベタなミステリードラマの設定も、津田が細かくツッコミを入れることで新しい見方ができるようになり、視聴者はドラマに引き込まれていく。 それに、思いがけないことが起きた時のリアクションはピカイチだ。津田は、自分の立ち位置がわからないので第三者的な視点の場合が多く、視聴者と同じ目線で驚いてくれる。リアクションのタイミングや動作も完璧で、物語にドライブ感を生み出されている。 また、第2弾・第3弾では芸人のみなみかわも巻き込まれるのだが、ダブルツッコミとしてドラマのおもしろさが倍増。みなみかわが登場することで津田は自由に動けるようになり、時には設定に乗ってボケに回ることも。 お笑い要素を2人が足していくことで、「名探偵津田」は極上のエンタテイメント作品に仕上がる。正直、ここまで3話が制作されているが、ミステリードラマとして設定や謎解きが秀逸だとは言えない。なのに、津田(場面によってはみなみかわ)が主人公になることで、退屈なストーリーも続きが気になってしまう。そこに、「名探偵津田」の魅力がつまっているように思える。
今回はスケールアップ、ただ荒削りのほうがおもしろいかも
さて、今回の第3弾は「有名人の卒業アルバム、その地元に行けば意外とすんなり手に入る説」のVTR終わりでトークする『水曜日のダウンタウン』のスタジオで殺人事件が発生し、現場に居合わせた名探偵津田が事件解決に立ち上がるという流れだ。 まず言えることは、序盤は通常回、そして本編は2時間スペシャルと、週をまたいでの放送で尺が長くなったこともあり、物語のスケールが大きくなった。いつもの水ダウだと思って上記の説を見ていたら、実はミステリードラマの前フリだったという壮大さが楽しめる構造といえるだろう。 また、今回は現実とミステリードラマの世界をクロスオーバーさせる演出が増えていた。 前述のように、津田(場合によってはみなみかわも)だけが現実と虚構の世界線を行き来するのだが、これまでの回での架空のロケ番組や、地方の村人たちといった設定とは異なり、今回は殺人事件が水ダウという実在の番組で起き、津田と先輩関係にあるダウンタウン浜田から犯人探しを依頼された。そのため、ミステリードラマのフィクション世界の住人としての自分と、現実世界の自分がゴチャゴチャになり、2つの世界線のはざまで混乱し、戸惑う津田が面白い。 加えて、彼にとって極めて親しい関係にある意外な人物もサブライズ登場するのだが、ミステリードラマ内の設定では、「津田のことを全く知らない」キャラクターであるなど、巧みなワザを効かせているのも笑いを誘う。 今回は「名探偵津田」として回を重ねたことで、前作での印象的な登場人物と縁のある人が出演するなど、過去作が“フリ”になっており、シリーズものとしての醍醐味を感じさせるものであったといえるだろう。 ただ、惜しむらくは、初回から見るとパワーダウンした印象もあった。第1弾・第2弾は演者や設定に荒削りなところがあり、それがおもしろさを増していた。特に、第2弾では犯人役も含め、俳優の演技がグダグダになるおもしろさがあった。 今回の第3弾ではサクサクとストーリーが進み、ミステリードラマとしての完成度は上がっているように思える。だが、もっと、津田の混乱する姿を楽しむには、荒い作りのほうがおもしろいのではないかと。 なんにせよ、今回も大きな反響を生み出した「名探偵津田」。松本人志の活動休止後、初の同シリーズとなった第3弾は松本の不在を一切感じさせることなく、新たな番組の視聴者の獲得にも成功しただろう。第4弾が制作され、もっともっとおもしろい津田の姿が見られることに期待したい。 <文/ゆるま小林> 【ゆるま 小林】 某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
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