海外に6メートルのド派手ブランコも、いきなり映えスポットに変貌した「横須賀」 前のめりな再開発事情
だが、人件費や資材費高騰の現在はタイミングとしては微妙なところ。すでに解体が始まっている駅前の若松町1丁目地区はまだしも、それ以外の検討エリアで開発が実際に行われることになるか、数字的に合わないのではないかという噂も聞こえてくる。 例えば、大滝町1丁目地区では2014年に再開発協議会が立ち上がっているのだが、この場所では以前に一度、民間の開発計画が中止になっている。 現在、中心部では一般のマンション建設も進んでおり、価格は3000万~6000万円(40㎡強~73㎡)ほどと急激に高騰する都心部に比べると手頃な印象である。また、2015年に完成したタワーマンションでは高層階の2LDK70㎡超が7000万円弱で出てもいる。買う側からすると比較的買いやすいわけだが、そのエリアに新築で、建設費のかかるタワーを供給する側から考えるとどうだろう。
しかも、複数棟が建つと考えると過剰な供給になる可能性も高い。地元にそれだけの市場があれば問題はないが、横須賀市の市民1人当たりの平均所得は323万円で、神奈川県下19市のうちで15位(令和元年度)。当然、地元だけでなく、広い範囲から購入希望者を集める必要があるが、横須賀市にそれだけの吸引力があるかどうか。 市内で郊外から中心部のマンションに住み替える動き自体はあるものの、価格面から高齢者が中心になっており、子育て世帯を呼びこみたいであろう事業者や、市の意図とは微妙にずれがある。
コロナ禍で地方に目が向くようになったと言われるが、2023年時点の資料「横須賀市の人口の動向」でみると2011~2021年の社会増減はほぼ横ばい。今後、社会増が見られれば別だが、今のところは移住に大きな期待はできない。 また、近接した立地に複数棟が建つとなると、タワーマンションの魅力の1つである眺望が得られない可能性も高い。 利便性の高い中心部に人口を集めるのは、地形的なハンディを補って行政コストを下げ、賑わいを生むという意味で面白い試みと言えるが、現在の市場や、状況下では難しく、事業が成立しなかったり、協議会や組合内部で合意できず延期に至る可能性もあり得る。