世界最大級の音楽フェス「コーチェラ2024」 フェス参加者に売り込みをかけるビューティーブランドの思惑
米カリフォルニア州インディオの砂漠地帯コーチェラバレーで、4月12日金曜日から開催されるアイコニックなフェスイベント「コーチェラバレー・ミュージックアンドアーツフェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)」のプロキシミティ・マーケティング(Proximity marketing/近接マーケティング)に向き合うブランドに着目した。 プロキシミティ・マーケティングには、ポップアップやギフティング、パーティー、隣接エリアで開かれるフェスティバルのスポンサーシップなどが含まれ、これらすべてが影響力のあるフェス参加者にアピールするために行われる。
コーチェラの「プロキシミティ・マーケティング」に賭けるブランド
ラナ・デル・レイ、タイラー・ザ・クリエイター、ドージャ・キャットといったヘッドライナーや、ノー・ダウト、サブライムといった懐かしいグループ再結成によって、毎年恒例のコーチェラミュージックフェスティバルは、2週間の開催期間中、開催地となる南カリフォルニアのコーチェラバレーに毎日12万5000人以上のコンサート来場者をもたらすと予測されている。 2023年は、25年の歴史の中で初めて両週末のチケットが完売に至らず、長期的な存続を危ぶむ批評家もいた。4月12日に始まる2024年のフェスティバルは完売しているが、しかし、その人気に期待しているマーケターたちは楽観的ではないと感じている。 スーパーグープ(SuperGoop)やリキッドI.V.(Liquid I.V.)、ファシールスキン(Facile Skin)、ジョアンナチェック(Joanna Czech)、カバーガール(CoverGirl)、ダヴ(Dove)、タングルティーザー(TangleTeezer)など、4月12日の週末に砂漠(コーチェラ・バレー)に向かう美容と健康のブランドにとって、そのゲームの名前は、「プロキシミティ・マーケティング」だ。 たとえば、リキッドI.V.は、コーチェラ開催中に開かれる「ネオン・カーニバル(Neon Carnival)」のタイトルスポンサーを引き受けた。ネオン・カーニバルは、コーチェラに参加するしないにかかわらず、有名人やインフルエンサーを砂漠に引き寄せることで知られる、非公式の招待制アフターパーティーだ。同イベントは、L.A.のナイトライフとホスピタリティのベテラン、ブレント・ボルトハウス氏がホストを務め、コーチェラ開催地のエンパイア・ポロ・フィールズから車で15分の場所にある、カリフォルニア州サーマルのデザート・インターナショナル・ホース・パークで開かれる。 4月13日土曜日の午後10時にスタートするネオン・カーニバルでは、オープンバーやDJ、カーニバル・スタイルのゲーム、観覧車、バンパー車など、アミューズメントパークにインスパイアされた催しが行われる。参加者に配られるリストバンドは入手困難なことで有名だが、このイベントにはボルトハウス氏のチームが審査した1万人の参加者が見込まれている。 リキッドI.V.のマーケティング担当ヴァイスプレジデントであるステイシー・アンドレード=ウェルズ氏は、「ネオン・カーニバルは、フェスティバルの季節でもっとも象徴的なアフターパーティーだ」と米グロッシーに語った。「フェスティバルと音楽と運動を楽しんだ長い1日のあとで、科学的裏付けのある水分補給製品『リキッドI.V.』のパワーを紹介する絶好の機会だ」。 アンドレード=ウェルズ氏によると、ネオン・カーニバルに到着すると、ゲストはリキッドI.V.のモクテルとスラッシーで迎えられるという。また、水分補給ステーションでの持ち帰り用の製品配布にの参加できる。さらに、ウォーター・タワー内に、リキッドI.V.ブランドのモクテル・バーや、ラウンジエリア、ギフトバッグ、eメールアドレスを取得できる2階建てのインタラクティブなフォト・ブースを設置する。 リキッドI.V.は、ネオン・カーニバル以外でも、コンサート来場者に水分補給パックの魅力を訴求するため、ティックトッカーのジェイレン・ノーブルやロビン・デルモンテを起用した有料コンテンツを実施する。また4月12日の週末には、開催エリアをターゲットにしたソーシャルメディア広告を展開する。ロサンゼルスとパームスプリングスのホールフーズ店舗で店頭デモを行い、アプリ内でリキッドI.V.を購入すると2ドル割引になるDoorDashクーポンコードを提供するほか、開催エリアのホテルで3個入りのサンプルを3万個以上配布するというものだ。 同じくネオンカーニバルのスポンサーであるヘアケアブラシブランドのタングルティーザーは、ブラシやその他のグッズを獲得できるオリジナルのもぐらたたきゲームを開催する予定だ。 カバーガールとダヴも、プロキシミティ・マーケティングに賭けているブランドだ。両社とも、女性向けライフスタイルメディアであるピュアワウ(PureWow)や、ソーシャルサイト「@moms」「@cocktails」「@recipes」を運営するライフスタイル出版社のギャラリーメディアグループ(Gallery Media Group)が開催する体験型ポップアップ、ギャラリーデザートハウス(Gallery Desert House)のスポンサーである。 ギャラリーメディアグループの最高収益責任者であるクリス・アンソニー氏は、「「ギャラリーハウス」というアイデアをスタートさせ、優れたクリエイターやインフルエンサー、そして私たち自身の内部コンテンツ制作チームを一堂に会し、招待制のイベントを開催している」と話す。これらのイベントは、重要な文化的な瞬間に密接に関連しており、これまでアートバーゼルや、SXSW、F1、プライド、コーチェラ、ステージコーチ、そして夏のハンプトンズでポップアップイベントを開催した。同氏は、インフルエンサーにアクセスでき、大量のコンテンツを提供することができることから、数週間のプロモーションが可能なポップアップはブランドにとっても魅力的であるという。「これらのポップアップの目標は、素晴らしいコンテンツを生み出すことだ」。 ギャラリーデザートハウスで開かれるプールパーティーでは、DJのシャンテル・ジェフリーズやDJミリー、ミュージシャンのオースティン・ミルズやビバ・ラティーナによるパフォーマンスが行われる。 インフルエンサーとのパートナーシップは、有料とオーガニックが組み合わされており、数名の有料インフルエンサーは、コーチェラが開かれる週末を通じてギャラリーデザートハウスに滞在する。このハウスは、カバーガールのクリーンコレクション(Clean collection)とアウトラストリップステイン(Outlast lip stain)に焦点を当てたコンテンツ制作の場となる。 アンソニー氏は米グロッシーに、「メイクアップアーティストが現地に出向き、カバーガールの製品を使ってすべてのインフルエンサーたちの夜のイベント準備を手伝う」と話した。 今年初めに発売されたダヴのセラムボディウォッシュコレクションも注目の的だ。コールドプランジ(水風呂)やサウナ、スライダー、IVs(点滴)、スムージーを完備した、ウェルネスに焦点を当てたオアシスで披露される。その他のスポンサーには、ヘッドラインスポンサーでもあるテキーラブランドのパトロン・エル・アルト・テキーラ(Patrón el Alto tequila)をはじめ、デルタ(Delta)やインフィニティ(Infiniti)、フライ(Frye)なども名を連ねる。 その他の近接イベントとして、パームスプリングスのコーチェラフェスティバルから車で30分ほど離れた場所で開催されるリボルブフェスティバル(Revolve Festival)がある。このフェスティバルでは、ミュージシャンのT-ペインやリュダクリスらも参加する独自の音楽ラインナップが予定されている。リボルブフェスティバルに出店するブランドには、参加者にフェイシャルケアを提供するジョアンナチェックやローデ(Rhode)のほか、2年連続で参加するスーパーグープなどがある。 スーパーグープは、6人のインフルエンサーのプレス旅行にも投資しており、モーテルをコンテンツ制作のハブに変身させ、砂漠地帯である開催エリア周辺のビルボードに広告を掲載する。 コートニー・カーダシアン・バーカーによるイベント、キャンプ・プッシュ(Camp Poosh)は、選ばれたインフルエンサーのための「特別な大人のお泊まりキャンプ」であり、ブランドスポンサーらは4月13日の午後、800人以上の招待客だけのために同イベントを開く。このイベントでは、ドリンク、DJ、フードトラック、そしてファシールスキンケアやウエラ(Wella)といったブランドによるアクティベーションが行われる。ウエラはリボルブフェスティバルにも出店する。 一方、実際のコーチェラフェスティバルでは、アメリカン・エキスプレス(American Express)がインフルエンサーの@InYourDreamsと提携し、「Get Ready With Me」と題したグラム・バーを会場に出現させる。アメリカン・エキスプレスのカード会員は、リボン付きのヘアアクセサリーやクロムボディグラムなどを選べるグラムサービスに参加することができる。 [原文:Beauty & Wellness Briefing: Brands are betting big on Coachella proximity marketing] LEXY LEBSACK(翻訳・編集:戸田美子)
編集部