【ペイント開発に1年間】ロールス・ロイス・スペクター・ルナフレアは光学現象に由来
試行錯誤は1年以上
ロールス・ロイスは、思わず息を呑むほどに美しい、スペクター・ルナフレアを発表した。 【写真】スペクター・ルナフレアとスペクターを写真で (143枚) このビスポーク・カーは、アメリカのある大切な顧客からの依頼によって製作されたもので、一つの金字塔となるこの一台を洗練させ際立たせているポイントは、魅惑的な虹色効果を生み出す見事なホログラフィック・ペイント仕上げだという。 そのインスピレーションと名称は、色とりどりの光の輪が月を囲む月暈という光学現象に由来し、月の光が高度の高い巻層雲を通るときに、氷の粒が微小なプリズムとなって、光を透過させるダイヤモンドのように月光を屈折させ、心奪われるような鮮やかな色彩の輪を生み出す現象だ。 この現象をビスポークのペイント仕上げで表現するための試行錯誤は、1年以上続いたと彼らは述べている。 顧客のコンセプトに沿った仕上がりを得るために、ペイントの化学成分、塗布のタイミング、ベースコートが徹底的に試され、最終的には、特別配合の真珠光沢のコーティングを含む7層のラッカー塗装を施し、フレーク状のフッ化マグネシウムとアルミニウムが注入することにより完成したことにより、ほの暗い環境では深いメタリック効果を演出し、明るい陽光の下では虹色の鮮やかな色彩が花開く。
スペクター・ルナフレアのコンセプト
■ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポークデザイン責任者 マルティナ・スターク 「私たちは、お客様のビスポークのコンセプトが実に多様なアイデアから影響を受けていることに絶えず驚かされています。他のコミッションの素材や仕上げ、テーマなどをご覧になり、それがインスピレーションの源となっていることも多いようです。スペクター・ルナフレアはその完璧な一例です。 月暈の幻想的な美しさを探求するこの一台は、あるお客様が別のビスポーク・カーのペイント仕上げを目にしたことがきっかけで誕生しました。 このようなアイデアの交雑ともいえる共生的な関係性は、イノベーションと創造性の『好循環』を育み、それは、ビスポークのデザイナーたちにとって、ビジョンを託してくださったお客様に比類ない価値をお届けしていくうえで、極めて重要な意味を持ちます」と述べた。 スペクター・ルナフレアのコンセプトの一部は、世界に一台限りのビスポークのもうひとつの傑作、ファントム・シントピアからインスピレーションを得ており、2023年に公開されたファントム・シントピアの塗装仕上げには、色を変化させる効果のある鏡面顔料を使用したダークな色調の「リキッド・ノワール」が採用されている。 ファントム・シントピアに魅了されていた顧客は、このコンセプトを明るく光り輝かせ、心奪われる月暈の現象を反映したものを表現してほしいと、ビスポーク・コレクティブに依頼した。 過去のコミッションがまったく新しいコンセプトとストーリーに直接反映され、インスピレーションを与えるという、このようなアイデアの相互作用は、ビスポークの力をまさに物語っていると彼らは語る。 このクリエイティブな好循環とアイデアの相互関係が、ロールス・ロイスのビスポーク・コレクティブのデザイナー、エンジニア、職人たちのクリエーションを絶えず発展させる新しい機会を提供する。 スペクター・ルナフレアのドラマチックなコーチワークは、フルビスポークのインテリアによってさらに引き立てられ、ネイビーブルー、ホワイト、ピオニー・ピンクの色調は、月暈で見られる色のスペクトルを思い起こさせるものだ。 この配色はシート、ドア、スターライト・ヘッドライナーで使用されているほか、外側がネイビーで内側がアークティック・ホワイトのデュアル・トーンのステアリング・ホイールにも同じテーマが反映されている。 スペクター・ルナフレアは一台限り製作され、独創的なルナフレアのペイントはこのコミッションを依頼された顧客専用のものとなる。
AUTOCAR JAPAN(執筆)