【卓球】パリ五輪リザーブの木原美悠、男子銀メダリストから受けた刺激。難易度の高い反転プレーに挑戦
対戦相手を翻弄する「反転プレー」。ラケットをクルクル回し、同じ打球面から異なる球質のボールを繰り出す
8月25日、東京・代々木第二体育館でTリーグ2024-2025シーズンの女子開幕戦、木下アビエル神奈川対日本生命レッドエルフ戦が行われた。 昨季のプレーオフファイナルでは日本生命レッドエルフに惜敗し、王座奪還を許した木下アビエル神奈川。しかし、今季の開幕戦では2・3・4番のシングルスにパリ五輪・日本女子代表の張本美和と平野美宇、団体戦のリザーブ(Pカード)である木原美悠を揃える強力な布陣で、3-1で勝利を収めた。 4番に出場した木原美悠は、笹尾明日香(日本生命レッドエルフ)に最終ゲーム9-11で惜敗した。しかし、そのプレーは挑戦的かつ意欲的なものだった。 木原はフォア面に回転がかかる裏ソフトラバー(黒)、バック面に球離れが早く、スピード重視の表ソフトラバー(赤)を貼る前陣速攻型。しかし、1ゲーム目の序盤から何度もラケットをクルクルと反転させ、バック面を裏ソフトラバーに反転してバックドライブを打ったり、フォア面を表ソフトラバーに反転して台上強打を放つ。木原の反転プレーについて、試合後の会見で中澤監督に尋ねると、興味深い答えが返ってきた。 「パリ五輪でスウェーデンのモーレゴード(男子シングルス銀メダリスト)のプレーを見て、自分にも反転したり、切ったり、そういう変化が必要ではないかということを自覚した。本人とも相談して、帰国してから取り組んでいます」(中澤監督) 多角形の独特な形状のラケットを使いこなし、変幻自在なプレーでパリ五輪に旋風を巻き起こした北欧の鬼才・モーレゴード。その唯一無二のプレーが、木原にも影響を与えていた。リザーブとして献身的にチームを支えるだけでなく、貴重なヒントをパリから持ち帰ったのだ。 ラケットを反転させることはそう難しくないが、サービス・レシーブからのパターンや状況に応じて反転させ、攻守に生かすのは極めて難易度が高く、世界的に見ても成功例と言えるケースは稀だ。中澤監督も「まだ完成度が低い」と語るが、相当な修練が必要となるだろう。しかし、独創的なプレーの下地となる、類まれなボールセンスが彼女にはある。 20歳にして全日本選手権ではすでに二度の決勝進出を果たし、同世代のトップランナーとして走り続ける木原。しかし、その目はすでに4年後のロサンゼルス五輪を見据えている。勇気ある挑戦に拍手を送り、新たなプレースタイルの創造に期待したい。
柳澤 太朗