「300人以上の宗教2世が協力してくれて…」自身も洗脳された監督が“宗教虐待”に斬り込んだ思い
さらに、いざ撮影が始まると、今度はトラブルが続いた。 「センシティブな内容ですから、主演が2回降板したんですよ。それでも人間としてこの映画は届けなければいけないと思った。だからスポンサーに土下座する勢いで『主演は代わりに私がやりますから、この覚悟でお金をいただけませんか』とお願いしたんです」 ちなみに、映画で非常に強い印象を残しているのが、主人公・すずの母親で宗教1世の恵を演じる安藤奈々子さん。 実は実年齢では平田さんの2歳上なのに、母親を演じたのだ。 「安藤さんはもともとすず役のオーディションで来ていたんですが、『絶対恵だろ!』と。普段はすごく明るくて綺麗な方なんですが、オーディションで演技を見せてもらったところ、すごく目が怖かったんですよ。 すずは可哀想じゃなきゃいけないのに、むしろすごい恐怖を感じて。その前の作品は高校生の役をやったそうで、『いきなり高校生のお母さんですか』と戸惑っていましたが、『満場一致だったのでお願いできませんか』と言うと、受けてくれました。 それで、老けメイクができるメイクさんだけは雇ったんですが、それでも完全には老けないんですよ。逆にそれが年齢の分からない不気味さ・怖さがあって良かったと思います」 ◆300人以上の宗教2世が取材協力してくれ、人を紹介してくれ、寄付で応援もしてくれた… 映画ではすずが小さな頃に恵の布教活動に連れて行かれる様や、マラソン大会、誕生日のこと、学校でのイジメなどが描かれるが、これらは全て2世への取材で聞いた実際のエピソードだとか。 「他に、親にナイフを向けられるシーンや、レイプのシーンなども、取材で聞いた話で、全部嘘がないんですよ。個々のエピソードや実際に聞いたセリフなどは、許可をとりながら使っています」 亡きAさんに捧ぐ映画として作った本作には、300人以上の宗教2世が取材協力してくれ、人を紹介してくれ、寄付で応援もしてくれた。 「主演が2回交代したけど、私が主演をやると言ったら、逆にすごくお金が集まったんです。こんなに覚悟を持った監督って見たことないと言ってくれて、応援してくれる人がたくさんいて。 それで、長編映画にできました。私が入信したのは、同じ宗教の信者以外全員サタンとみなす宗教だったので、当時は周りからいろいろ言われても、頑なになっていて『サタンが言っているな』くらいに思っていたんですよ。でも、人間捨てたもんじゃないな、全然サタンじゃないなと思いました(笑)」 公開はアップリンク吉祥寺で3月22日から。平田さんはここに至るまでにたくさんの嫌がらせや誹謗中傷があったことを明かし、笑顔でこう言った。 「公開までまだ日にちがありますし、毎日舞台挨拶で登壇するので、怖いですよ。催涙スプレーを持ち歩けとも言われます。 でも、私は絶対に自分が間違ったことをしていないと信じているから、戦えるんです」 ■『「神様のおかげでこの会社に」OB訪問で出会った新興宗教の信者…』後編では、平田さん自身の入信と脱会の話を聞いた。 取材・文:田幸和歌子
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