「300人以上の宗教2世が協力してくれて…」自身も洗脳された監督が“宗教虐待”に斬り込んだ思い
自殺という言葉は絶対に使いたくない、自分で殺したわけじゃなく、死に追いやられたから「自死」なのだと平田さんは強調する。 「Aちゃんは生まれた瞬間に教団に親を奪われるんです。生まれてからは自由を奪われるんです。その後友達を奪われて、生活を奪われて、人生を奪われて、命まで奪われているのに、 自殺って言うなよと」 Aさんの自死を知り、しばらく寝込んだと言う平田さん。 だが、「このまま私がAちゃんの遺書にしたためられた思いを届けなかったら、その思いがなかったことにされるし、Aちゃんの人生もなかったことになる」と思ったことから、映画を作ることを決意。 ’21年10月から取材をスタートした。 最初はTwitter(現)で宗教2世の方をフォローし、DMで取材依頼するところから始め、「宗教二世の会」とつながり、そこで出会った2世の方にまた他の2世を紹介してもらうという形で、取材を進めていった。 ◆安倍元首相の襲撃事件…「それが統一教会絡みだと知った時、正直、『ついに、起きてしまったか』と思ってしまう自分がいて」 さらに、安倍晋三元首相の襲撃事件以降は、逆に取材してほしいという連絡がたくさん来るようになったという。 「もちろんどんな理由があっても人を殺しちゃいけないですから、その痛ましい事件には私も心が痛みました。 ただ、それが統一教会絡みだと知った時、正直、『ついに、起きてしまったか』と思ってしまう自分がいて。 取材でも、国が味方してくれないと嘆いていた統一協会2世の方もいましたし、それがどういうことか当時はわかっていなかったんですが、あの事件が起きて、鈴木エイトさんの本を読ませていただいた時に全部がつながった気がしました」 多数の新興宗教団体延べ300人ほどの宗教2世に取材してきた平田さんは、それら全てに共通していることとしてこう述べる。 「宗教虐待って、他に性的被害や虐待、教祖の世話など、複合的に犯罪に近いことが必ず行われているんですよ。 それと、カルト宗教に共通しているのは、“カリスマがいること”、“何らかの方法でお金を搾り取ること”、“自分たちで聖歌や聖書を作っていること”。 私は宗教を否定したいわけじゃない。でも、取材していくうちにわかったのは、どの宗教であっても、傷つく人がいる以上、その声に耳を傾けるべきだと思いました」 さらに、取材を進める中で「Aちゃんも、私だけの責任じゃない。悲惨なこの宗教虐待に殺されたんだ」ということがわかり、心が軽くなる一方、そんな自分を責める思いもあったという。