[山口県]火の山ロープウェイありがとう 66年間の運行終了、多くの市民が別れ 下関市
関門海峡の景色を空中散歩しながら楽しめるとして多くの市民や観光客に愛されてきた下関市の「火の山ロープウェイ」が10日、最終運行日を迎え、66年間にわたる営業にいったん終止符を打った。関門橋が架かる以前から火の山の山頂付近と山麓とを2台のゴンドラで結んできた。開業以来続けてきた無事故という輝かしい記録を守って、無事にその役目を終えた。 最終日の10日は別れを惜しむ市民らが午前10時の営業開始時刻の1時間ほど前から集まり始めた。午後から雨が降るあいにくの天候となったが、臨時便を動かすにぎわいぶり。天候に恵まれた9日は1618人、10日も1520人と普段の休日の3倍となる人が“乗り納め”に訪れた。3月に始まったラストシーズンは例年の1・4倍の人が利用し、1958年4月からの累計乗車人数は1350万9915人となった。 午後4時半からは下駅の前で記念式典があり、関係者ら約20人が出席した。北島洋平副市長が「寂しいが、悲しいお別れではない。今のニーズに合った洗練された新たなロープウエーとしてお目見えする頃には山頂に展望デッキやアスレチック施設も整備され、新しい魅力を市民や観光客に届けられる」とあいさつ。運転手の下岡多喜男さん(73)らに感謝状や花束が贈られた。 同5時ごろに発車ベルが鳴り響くと満員状態の最終便が出発。出席者らが手を振りながら見送った。その後も臨時便が運行された。 最終便のゴンドラ内でガイドを務めた元川敦子さん(61)はマイクを握りながら感極まって言葉に詰まった。「これで本当に“卒業”なんだなという思いが込み上げた。この火の山の景色をいつまでも忘れずにいてほしい」と元川さん。 30年間運転してきた古沢卓巳さん(48)は「お客さまが最後まで笑顔だったのでうれしかった。とりあえず今は無事故で営業を終えられてホッとしている」と笑顔を浮かべた。 市が進める火の山地区の観光施設再編整備計画に伴う運行終了で、新たなパルスゴンドラ(固定循環式ゴンドラ)は2027年3月ごろ完成予定。八つの8人乗りゴンドラを回転させて火の山の上と下を結ぶ計画だ。現在の施設は来年1月ごろから解体工事に取りかかるという。