【漫画家に聞く】女子高生が恋人の”羽”を切り落とす理由とはーーファンタジーだけど切実な『羽田くんのキリトリ線』
人の目を惹く素敵な特徴でも、本人にとってはそれが大きなコンプレックスになっていることがある。12月中旬にXで公開された創作漫画『羽田くんのキリトリ線』は、そうした問題を切実に、そしてある意味で衝撃的な形で描いた作品だ。 切実な問題に迫った『羽田くんのキリトリ線』 人間以外の動物の特徴を持って生まれた“新人類”が当たり前に存在する世界。女子学生・佐倉の彼氏・羽田も背中に鮮やかな白い羽を生やした新人類だ。端正な顔立ちに加えて、その羽の美しさも加わり、全校生徒から憧れの目を向けられている羽田。佐倉は自分が羽田に釣り合っていないと思って悩んでいるが、羽田は羽田で誰にも話せない葛藤を抱えていて――。 学生時代に読んだ『バクマン。』(集英社)にハマって漫画やイラストを描くようになり、現在はアシスタントをしながらオリジナル作品の制作に励んでいるという作者の花曇パスタさん(@ebinashi_ebifly)。ファンタジーでありながら、人間くささが感じられる本作を描いた背景など、話を聞いた。(望月悠木) ■羽を切り落とすシーンが浮かんだ ――『羽田くんのキリトリ線』制作のキッカケを教えてください。 花雲:ふと「日常の中にファンタジーをひとつまみ入れた物語を描きたいな」と思って制作しました。 ――その“ファンタジー”が本作に登場する“新人類”という架空の生き物になったのですね。なぜ新人類は誕生したのでしょうか? 花雲:“天使みたいな羽の生えた人の羽を恋人が切り落とす話”という設定が最初になぜか浮かび、そこから膨らませていきました。 ――羽田と佐倉の関係性を軸に物語が進行していきますが、2人のメインキャラはどのように作り上げましたか? 花雲:羽田くんはみんなからモテるイメージで、色素薄い系美人を目指しました。佐倉ちゃんは「羽田くんの彼女は地味な女の子のほうがギャップがあるかな」と思い、ホクロを描いたり髪型は伸ばしっぱなしで結び癖がついていたりなど、ビジュアルに気を配りました。実は羽田くんのビジュアルは、実在するアイドルなどを参考にしようと思ったのですが、あまり上手く反映されなかったです。 ■羽を切り落とす衝撃的なシーン ――羽田の抱える悩みがとても切なかったです。とはいえ、新人類の心情を理解して、そのうえで描くことは難しかったのでは? 花雲:最初から「コンプレックスの物語を描きたい」と思っていました。ですので、「他人から見たらとても羨ましいことでも、本人にとってはとても気にしている」ということを意識しながら羽田くんの葛藤を描きました。 ―― 先ほど「天使みたいな羽の生えた人の羽を恋人が切り落とす話が描きたかった」と話していました。なかなか衝撃的なシーンでしたが、実際に描いてみてどうでしたか? 花雲:「恋人の羽を切り落とす」場面だったので絶対入れたいシーンだったので、描けたこと自体には満足しています。ただ。「もっと表現力があれば、もっとシリアスで迫力のあるシーンにできたのではないかな?」と思っており、少し悔しいシーンでもあります。 ――ちなみに羽を切り落とすシーンは、どういったことを意識しながら描いたのですか? 花雲:「なるべくリアルなシーンにしたい」と思っていました。血はもちろん、苦痛にもだえる羽田くんの表情、羽を切っている時のお風呂場の雰囲気など、「もっと細かく気をつけながら描ければ」とやはり後悔が残っています。 ――『羽田くんのキリトリ線』というタイトルでしたが、改めてタイトルに込めた狙いを教えてください。 花雲:羽田くんにとってのキリトリ線は羽だった、羽田くんにとってはいつか羽を切るという不自然なことが自然なことだった、という意味でこのタイトルを付けました。 ――最後に今後の漫画制作における目標は? 花雲:読んでいて涙が溢れたり笑ってしまうような漫画を目指しています。また商業での連載も夢なので、いつか自分の好きなキャラクター達で、読んでくれる人の心をぐるぐる掻き回したいです。今も読み切りを制作中なので、早くみなさんに読んでもらいたいです! 楽しみにしていてください!
望月悠木