「光る君へ」源氏物語“爆誕シーン”CGなし 舞い降る色紙に何が書いてある?演出語る裏側 総集編29日
◇「光る君へ」チーフ演出・中島由貴監督インタビュー 脚本家の大石静氏(73)と女優の吉高由里子(36)が3回目のタッグを組んだNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は29日、「総集編」(後0・15~4・03)が放送される。一挙4時間のオンエアを前に、チーフ演出を務めた中島由貴監督に名場面の一つ「源氏物語」“爆誕シーン”の舞台裏を聞いた。 <※以下、ネタバレ有> 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛けた大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となった。 第31回「月の下で」(8月18日)。まひろ(吉高由里子)は、藤原道長(柄本佑)から執筆を依頼された物語が一条天皇(塩野瑛久)に献上するものだと知る。藤原彰子(見上愛)との仲を取り持つための「枕草子」を超える物語――。まひろは道長を通じ、一条天皇の“生身の姿”を“取材”。夜、道長の帰り際、2人は一緒に月を見上げた。 まひろは構想を書き留め、屋敷内を歩き回る。そして、その瞬間が訪れた。色とりどりの紙が舞う。筆を執ると「い…(づれの御時にか)」と書き始めた。 台本のト書きに「思った通りにいかずイラついているまひろ」「乗って書いているまひろ」などとあった描写を、中島監督が膨らませた。 劇中、一条天皇が「女ならではのものの見方に、漢籍の素養も加わっているゆえか、これまでにない物語となっておる。藤式部は『日本紀』にも精通しておるしな」(第37回、9月29日)、ききょう(ファーストサマーウイカ)が「まひろ様の漢籍の知識の深さ、この世の出来事を物語に移し替える巧みさ。どれもお見事でございますわ」(第38回、10月6日)と褒めたように、中島監督は「とてつもない量の知識の蓄積がないと、『源氏物語』は到底書けないと思います。今回ドラマを作るにあたって、あらためて実感したのは紫式部の凄さ。リスペクトも込めて、まひろが幼い頃からインプットしてきた知識がアウトプットされる瞬間をビジュアル化できたら、説得力が出るかなと考えて、できたのがあのシーンです。インプットの部分の和歌や漢詩の描写を、コツコツと積み上げてきたので、それを生かせるのではないかと思いました」と振り返り、経緯や狙いを説明。 放送当初は「源氏物語」のアイデアが天から降ってきた、と受け取っていたが「そう見えてもいいのですが、彼女が溜めに溜めてきた知識が脳からバーッと一気にあふれ出て、それが降ってくる、というイメージです」と解説。それゆえ、カラフルの紙には「1枚1枚、まひろが触れてきた和歌や漢詩の一節、道長から贈られた歌、道綱(上地雄輔)の母・寧子(財前直見)の歌なども書かれています」と明かした。まひろのエネルギーとも言える“言の葉”が見事に表現、映像化された。 美術チームからはCGの提案もあったが「実物の紙を落とすテストをしてみたら、案外うまくいったので(笑)、CGは使っていません。ハイスピードカメラで撮って、紙がゆっくり舞っている映像にしました。このシーンも美術チームが頑張ってくれて、感謝しています」。“道長要請説”をベースに源氏物語」誕生の謎に迫った今作。「総集編」でも再度、味わいたい。