新庄監督の上沢直之に「悲しい」発言の背景 「ビジネスだから仕方ない」に欠けている視点とは
■上沢擁護の声はあるものの… 日本ハムの施設を利用したから「他球団に移籍してはいけない」ということはない。鍵谷も親交が深い先輩なので、引退セレモニーへのオファーを断る理由がなかったのだろう。野球人生は短い。ソフトバンクが4年推定総額10億円の契約を用意したのに対し、日本ハムの提示条件は単年契約だったことが報じられている。プロ野球OBを中心に「情に流されず、ビジネスライクで判断した上沢の決断は責められない」「上沢はルールを破ったわけではない」などと擁護の声も少なからずある。とはいえ、上沢の選択について、球界やファンから批判の声は絶えない。 日本ハムのエースだった有原航平も日本でFA資格を取得する前にポスティングシステムで米国に渡り、メジャーで2年間プレーして日本球界復帰の際にソフトバンクに入団、「有原式FA」と批判された。だが、同じ道をたどった上沢への批判の声は、そのときをはるかに上回る。なぜだろうか。 日本ハムOBは、こう指摘する。 「有原は1億3000万円の譲渡金がレンジャーズから日本ハムに支払われたことが背景にあると思いますが、上沢は立ち振る舞いを完全に間違えました。日本球界復帰で他球団と契約する選択肢があったなら、帰国後に日本ハムの球団施設を使わせてもらうべきではなかった。新庄監督が就任1年目から特別な投手として目をかけていたのが上沢でした。好投してもほめずに、球界のエースになるためにさらに高いレベルを求めていた。新庄監督は上沢が日本球界に復帰するなら一緒にプレーできることを待ち望んでいたはずですが、その思いも踏みにじった。条件面がソフトバンクより劣っていたとしても、日本ハムであと1年だけプレーして、国内FA権を取得してから権利を行使すればいい。考え方が古いかもしれないですが、恩返しをせずに去るのはおかしいですよ」 2年連続最下位から昨年2位に躍進した日本ハムだが、首位を独走して4年ぶりのリーグ優勝を飾ったソフトバンクと13.5ゲームの大差をつけられた。投打で層が厚い巨大戦力に、大切な仲間だった上沢が加わる。新庄監督は「彼なりにいろいろ迷って決断したと思う」と心情を配慮した上で、「とにかく負けない。彼が投げるときにはもうファンのために負けない野球はしていきたいですね」とファンの思いを代弁したという。