衆院選「情勢報道」どう参考にすべき? “メディアの思惑”反映しやすさから「公職選挙法の禁止事項では」疑問の声も
なぜ人気投票を公表してはいけないのか
もし、支持する立候補者や政党が決まっていない有権者が「これだけたくさんの人が〇〇候補を支持している」という人気投票の結果を目にした場合、「この立候補者はこんなに人気があるのか、じゃあ票を入れよう」または「この立候補者はまったく人気がないから、票を入れるのはやめよう」といった、いわば“勝ち馬”に乗る思考になる可能性は高いのではないだろうか。 三葛弁護士は、これこそが「人気投票の公表」が禁止されている理由としつつ、人気投票が抱える“問題点”についても指摘する。 「大きな問題としては、調査する側の“思惑”を反映しやすいことです。 たとえば今であれば、『裏金を追及する野党の議員がいいですか』『裏金ズブズブの与党の議員がいいですか』といった“価値判断を反映した内容”で聞けば、野党に有利、与党に不利な結果が出やすいでしょう。聞き方ひとつ取ってみても、結論が大きく変わることはよくあります。 マスコミ各社にもそれぞれの“色”はあります。こと人気投票のような調査においては、厳正中立で客観的な指標を作ることは極めて難しく、その一方でそれを選挙の結果に反映させることは望ましくないため、その公表が禁止されているのです」
マスコミの「情勢報道」が公職選挙法違反でないワケ
とはいえ、テレビや新聞、週刊誌に目を向ければ、「情勢報道」はごく普通に行われている。 「公職選挙法138条の3は、あくまで『公表』を禁止しているのであって、人気投票そのものを禁止はしていません(ただし、間接的に抑制しようとしている、との解釈もある)。各政党や候補者陣営も、公表しないことを前提に独自に世論調査を行っており(その調査自体は人気投票に該当するとも考えられる)、戦略および戦術の前提としています。 それぞれの“色”こそあれ、マスコミ各社は可能な限り客観的で正確なデータを得ようと、コストをかけて情勢調査を行っています。ただし報道で注目すべきは、どこも『生の数字』、つまりデータは出さず、各社独自の分析を加えた上で『A、B、C』『〇、△』などで情勢を表しているということです。 マスコミ各社も当然、公職選挙法を守りながら、『報道の自由』に基づき情勢報道を行っています。面接調査や電話アンケートなどにより集めたデータ(データそのものは人気投票の結果に当たり得る)をもとに独自の解釈を加えることで、公職選挙法により禁止されている人気投票の公表ではなく、『報道』である、こととなります」(三葛弁護士) 有権者としては、情勢報道に影響されて投票先を決めたり、圧勝しそうな立候補者がいるからと投票に行かないことは賢明とは言えないが、情勢報道を見比べ情勢を理解した上で、投票先を選ぶ参考にする価値はあるのではないだろうか。投票日は間もなくだ。
弁護士JP編集部