「老後」は存在しない…「不老不死」よりも「健康寿命」を延ばすことが重要!iPS細胞の可能性を還暦越えの科学者が語る!
老化で体に不調が起こるメカニズム
谷川 その研究方法が、サイラでは主流ということですね。 山中 そうです。従来もいまも主流ですけれども、もう一つ、最近注目されているのが、個々の病気ではなく、老化そのものを1つの現象として捉える研究で、「老化研究プロジェクト」で進めているものです。 同じように暮らしていても、若いときは認知症になる人は非常に少ないし、膝が痛くなって歩けなくなる人も滅多にいません。難病のパーキンソン病になる人も20代、30代では非常に少ないわけです。 でも60、70になると、なんらかの病気になったり、運動器疾患が起こったりします。どうして歳を取ると、いろいろな病気になりやすくなるのか。 加齢に伴って、人の体をつくる細胞の余力がどんどん減っていき、ちょっとしたことで病気になってしまうんです。じゃあ同じ細胞なのになぜ余力がどんどん減っていくのか。 余力が減らない方法や、減ってしまった余力を取り戻す方法はないのか。一つ一つの病気の研究も大切ですが、細胞の老化そのものに焦点を当てていくアプローチで健康寿命を延ばそうという研究です。 『「脳の細胞は増減しないんです」…意外過ぎる認知症の原因! 細胞の「レジリエンス」をあなたは知っていますか? 』へ続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/谷川 浩司(棋士)