【データで選出8月月間MVP】「セ・最強打者」オースティンが3ヶ月連続で打撃トップ。パ・リーグは日本ハムの主軸コンビが同時にランクイン【コラム】
ロッテ・藤原がパ最高評価。巨人・門脇は圧倒的な守備範囲で全体トップの守備貢献
守備評価には同じイニングを守った平均的な同ポジション選手と比較してどれだけ失点を防いだかを表すUZR(Ultimate Zone Rating)を使用する。しかしUZRは同ポジションの選手との守備を比較する指標であるため、異なるポジションの選手を比較する際はポジション間の補正を行う必要がある。一般的に高い守備力、もしくは独自性のあるスキルを要するポジション(遊撃手や二塁手、捕手など)を守った選手はプラスに補正をかけ、その逆のポジション(一塁手や左翼手など)はマイナスの補正をかけるといった具合だ。この守備位置補正をUZRに加えたものが守備貢献となる。 パ・リーグでもっとも優れたはたらきを見せたのは藤原恭大(ロッテ)。8月は平均的な選手に比べて4.9点もの失点を防いだという評価だ。1日の西武戦では2死二塁から右翼前への打球を捕球すると、本塁への強烈なバックホームで走者をアウトに。打撃でも3打数2安打と活躍し、チームの勝利に大きく貢献した。 ランキング外も含めた全選手を対象に守備を見ると、門脇誠(巨人)も優れたはたらきを見せた。8月は平均的な選手に比べ、守備で全選手中トップとなる5.3点もの失点を防いだという評価だ。今季の巨人は盤石の内野守備陣を誇っている。坂本勇人や吉川尚輝といった名手とともにその一角を担うのがこの門脇だ。24日の中日戦では、1点リードで迎えた3回2死一三塁の場面で三遊間に抜けそうな打球を好捕。素早く一塁に送球し、同点のピンチを切り抜けた。圧倒的な守備範囲の広さで、何度もチームの失点を防いでいる。
ロッテ・種市が12球団トップの貢献。日本ハム・北山は少ない投球回ながら圧倒的な内容
投手のWARは投球の質と量両面でどれだけ貢献したかから求める。質は「奪三振」、「与四死球」、「被本塁打」、「ゴロかフライかライナーといった打たれた打球の種別」、量は「どれだけ多くの機会をこなしたか」によって決まり、そこから平均的な投手と比較しどれだけ多くの失点を防いだかを算出。それが何勝分に値するのか換算したものが投手のWARとなる。 投手部門でパ・リーグは種市篤暉(ロッテ)、セ・リーグは髙橋宏斗(中日)がそれぞれ0.96、0.86とトップのWARを記録した。 両リーグトップの貢献を記録した種市。奪三振割合(奪三振/打者)は26.1%、与四球割合(与四球/打者)は1.7%。どちらもパ・リーグ平均(奪三振割合が19%ほど、与四球割合が7%ほど)よりもはるかに優れており、圧倒的な投球内容だったと言えるだろう。特に与四球割合は25イニング以上投げた投手の中でトップの数字だ。 パ・リーグでは他に北山亘基(日本ハム)の名前もランクインしている。他にランクインした投手全員が20イニング以上を記録している中、北山のイニング数はわずか13.2。それでも高い貢献を記録できたのは圧倒的な奪三振能力を発揮したためだ。北山の8月における奪三振割合は30.0%、これはパ・リーグ平均の約19%を大きく上回っている。 最後にセ・リーグでトップのWARを記録した髙橋宏にも触れよう。高橋宏は奪三振割合が22.8%、与四球割合が8.8%。奪三振はまずまず優秀だが、与四球ではランクインしたほかのどの選手よりも劣っている。にもかかわらず他の投手に差をつけることができたのは、被打球に占めるゴロの割合が68.9%(平均は45%ほど)と非常に高かったためだ。ゴロはフライに比べて長打につながりにくいため、より多くゴロを打たせることは失点を防ぐことにつながる。高い奪三振能力のイメージが強い髙橋宏だが、8月は少し意外なかたちで他の投手に差をつけていたようだ。 DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/ 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~7 』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
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