二輪の聖地(11月4日)
ピーター・フォンダ演じる主人公が、腕時計を道端に投げ捨てるシーンで始まる。1969年に公開された米映画「イージー・ライダー」。時はベトナム戦争の真っただ中。自由と平和を求めるバイクの旅が始まる▼秋が深まり、ツーリングに絶好の季節を迎えた。いわき市内の海岸沿いを走るライダーが増えた。映画に登場したハーレーダビッドソンを駆る中高年の姿も目立つ。新型コロナ禍で「三密」が敬遠されたのを機に、一度趣味から離れた人が再びハンドルを握っているという▼小名浜港にある観光物産施設「いわき・ら・ら・ミュウ」は休憩で立ち寄るライダーをもてなす。警備員が駐車場を親切に案内する。化粧直しのスペースがあるのも女性に優しい。昨夏、館内に設けたオートバイ神社には、お守りを求める参拝者が絶えない。「顔はめパネル」の写真が交流サイト(SNS)に投稿される。二輪の聖地との声も上がる▼バイクに乗ると脳が活性化し、ストレス軽減に効果がある―。東北大の川島隆太研究室が発表した。あれこれとすっきりしない日常をしばし離れ、心地良い浜風を切って聖地を目指す。御利益は、時計にとらわれない心の自由だ。<2024・11・4>