浜北の変遷見守った生花店「花大」、8月末に閉店 花と緑で街を彩り40年
浜松市・浜北の街を40年以上にわたって花と緑で彩ってきた同市浜名区沼の生花店「花大(はなだい)」が8月末で閉店する。松島芳隆さん(69)が25歳の時に店を構え、高校時代の同級生で妻の幸子さん(69)と二人三脚で切り盛りしてきたが、年齢を重ね、区切りにする。松島さんは「人に恵まれ、商売を続けられた」と感謝する。 8月下旬、花を買い求めた中央区の60代の女性は「開店時から利用した。なくなるのはさみしい」と語った。幸子さんは「プロポーズでバラを買う人もいた。成功してブーケも作るお客さんのことはうれしくてよく覚えている」と笑う。 松島さんが高校卒業後、市内の生花店で5年半の修行の後、独立して現在地に土地と建物を借りて店を始めた。開業当初は、地元の銀行に通って500円を貯金し「少しずつ信用をつくった」と振り返る。 地域の変遷も間近で見てきた。開業と同時期に浜北文化センターがオープンし、コンサートなどで生花の需要が増加。区画整理で新興住宅地ができた浜北地域では人口が現在も増加傾向にあり、この開業から今までの間には小学校が増えて入学式、卒業式の仕事も多くなった。2004年の浜名湖花博以降は花を飾る家庭が増えたと感じた。 一方、ホームセンターやドラッグストアといった量販店でも格安で花が売られるようになり、花大のような専門店の経営環境が厳しくなった。行政区再編で旧北区への配達など仕事も増えたが、花卉(かき)生産者の高齢化で出荷が細るなど仕入れも厳しくなっている。 別の仕事の道に進んだ息子たちに店を継がせるつもりはない。松島さんは「周囲の支えでやってこられた。今後は地元に恩返しがしたい」と考えている。 花大は31日まで。
静岡新聞社