ラクダのように一歩ずつ復興を
約13年の内戦の末にアサド政権が崩壊したシリアに来ている。中東に駐在していた2012年、初期段階の内戦を取材するために入って以来だ。 【写真】シリア内戦の激戦地となった首都ダマスカス近郊の町ドゥマには、破壊された建物が並ぶ まず足を運んだ場所の一つが首都ダマスカス近郊のドゥマだ。反体制派の拠点だったことから、政権軍の化学兵器を含む激しい攻撃を受けた。無傷の建物はないと言っていいほどの破壊の痕が広がるが、中心部にはにぎやかな市場が立つ。 そんなドゥマの名物はラクダ料理で、精力がつくといわれているらしい。さっそくラクダ肉を供する食堂の暖簾(のれん)をくぐった。 ぶつ切りにした赤身の串焼きはかなりのかみ応え。なのに、コブの脂身を混ぜたひき肉のケバブは柔らかくジューシー。違う食感が食欲をかきたててくる。 店主によれば、イスラム教の預言者ムハンマドが「年に1度はラクダを食べると良い」と言ったとの伝承があるという。ラクダのオスはメスを大事にするので、食べると「夫婦仲が良くなるんだよ」と笑う。 砂漠を渡るラクダは「辛抱強さ」のシンボルでもある。「だからドゥマは激しい弾圧にも抵抗を続けたんだ」なんて冗談も聞いた。 独裁体制が崩れたシリアが今後、順調に国際社会に復帰していけるかはまだ見えない。ラクダのように一歩ずつ復興を歩んでほしいと願った。(大内清)