欧米の小売業者が苦戦、経費増加し売り上げ伸びず-破産手続き開始も
(ブルームバーグ): 多くの週末、ロンドン東部の何の変哲もない路地に、何十人もがサンプルセールを目当てに列を作る。有名デザイナーの衣類が7割引きかそれ以上の値引き価格で提供されるのだ。
数週間前には、消費者が高級小売店マッチズによるバーゲンセールで掘り出し物を物色する中、弁護士たちは同ブランドについて倒産法の手続きを開始していた。英資産家マイク・アシュリー氏率いるフレイザーズ・グループに買収されてからわずか数カ月後のことだった。
マッチズの苦境は、個人消費が低迷する中で、小売業者の厳しい状況が欧米で広がっていることを示す最新事例だ。インフレが経費を押し上げ、個人消費を圧迫し、小売業者はぎりぎりの状態に追い込まれており、大規模な値引きですら生き残りに不十分な状況となっている。小売業者はその前には、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による休業やサプライチェーンの混乱など、さまざまな問題が重なり困難に見舞われていた。
コンサルティング会社ベグビーズ・トレイナー・グループのパートナー、ジュリー・パーマー氏は英国について、「国内で最も強力で知名度の高いブランドでさえ苦戦している」とし、「困難なマクロ経済環境、裁量的消費支出の減少、金利上昇、サプライチェーンにおける新たな課題」に言及した。
この業界はなお、1年で最も重要な時期であるクリスマスの残念な結果をまだひきずっている。英小売協会(BRC)とコンサルティング会社のKPMGのリポートによると、英国の昨年12月の総売上高は1.7%増にとどまり、1年前の約7%増を下回った。
米国も似たような状況で、小売売上高は今年、予想を下回るスタートとなった。その一方で、消費者物価指数(CPI)統計では変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が市場予想を上回る伸びとなり、消費者の買い控えの一因を物語っている。
デフォルト率上昇
JPモルガン・チェースが3月1日に発表したリポートによると、米ハイイールド債市場の小売りセクターではこの1年のデフォルト(債務不履行)率が5.4%超と、過去22年の平均である2.8%のほぼ2倍に達している。